りょうけん座アルファ星

りょうけん座α星は、りょうけん座で最も明るく輝く恒星で、3等級の明るさを持っています。春の夜空を彩る「春のダイヤモンド」を構成する星の一つとしても知られています。

実視連星としての特徴

この星の最大の特徴は、実視連星であるという点です。二つの星が互いに影響を及ぼし合いながら存在しており、それらを合わせた見かけの明るさは約2.8等級です。二つの星は約20秒角離れており、小型の望遠鏡でも容易に分離して観察することができます。

主星α2星の特異性

主星であるα2星は、りょうけん座α2型変光星の典型例として知られています。この星は極めて強力な磁場を持っており、その強さは地球の磁場の約1500倍にも達します。主系列星としては、最も強い磁場を持つ部類に属します。また、ケイ素、水銀、ユウロピウムなどの元素が局所的に多く存在しているという特徴があります。これらの元素が表面に多く見られるのは、星の内部でこれらの元素以外の物質を使い果たしてしまったためだと考えられています。さらに、鉄が豊富な金属線星としての性質も持っており、表面での元素分離に磁場が深く関わっているとされています。しかし、この強力な磁場の発生原因については、未だ解明されていません。

この磁場の影響により、スペクトル線の強い部分が自転に伴って見え隠れするため、α2星は変光星としての性質を示します。その光度は5.47日周期で+2.84等級から+2.94等級の間で変化します。

名称「コル・カロリ」の由来

バイエル符号では「α Canum Venaticorum」（略称はα CVn）と表記されます。α2星の固有名である「コル・カロリ (Cor Caroli)」は、ラテン語で「チャールズの心臓」という意味を持ちます。

この名称の由来については、イングランド王チャールズ2世が王位に復帰したことを祝して、天文学者のエドモンド・ハレーが命名したという説が広く知られています。しかし、ハレーがチャールズ2世の復位当時まだ3歳であったという事実から、この説の信憑性は低いと考えられています。

実際には、「コル・カロリ」という名前が最初に記録された1673年の文献には「Cor Caroli Regis Martyris（迫害された王チャールズの心臓）」と記述されており、これはチャールズ2世ではなく、父であるチャールズ1世を指していると解釈するのが妥当です。この名前は、チャールズ1世の処刑を悼んで名付けられたと考えられています。

2016年7月20日、国際天文学連合の恒星命名に関するワーキンググループ（Working Group on Star Names, WGSN）は、「Cor Caroli」をα2星の正式な固有名として承認しました。

その他の情報

りょうけん座の恒星の一覧

外部リンク:
* りょうけん座α星 - Wikisky: DSS2, SDSS, GALEX, IRAS, Hα, X線, 天体写真, 天体地図, 記事と写真

この星は、その特異な磁場と歴史的な名前によって、天文学的な興味を引く対象となっています。観測や研究を通じて、より多くの謎が解き明かされることが期待されます。

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