アイルランド公爵

アイルランド公爵：幻の爵位

アイルランド公爵は、中世イングランドにおいて短期間のみ存在した特別な爵位です。リチャード2世王の側近であったロバート・ド・ヴィアーが、その唯一の受爵者となりました。

創設と背景

1385年、ロバート・ド・ヴィアーはまずダブリン侯爵に叙せられます。これはイングランド史上初の侯爵位でした。さらに翌1386年、彼はアイルランド公爵の称号を得ます。この爵位は、アイルランドにおけるイングランド王の支配領域、いわゆる「ペイル」と深く結びついていました。

ロバート・ド・ヴィアー

ロバートはリチャード2世の信任厚い人物でしたが、その権勢は貴族たちの反発を招きました。1387年、ラドコット・ブリッジの戦いで訴追派貴族に敗北すると、彼は大陸への亡命を余儀なくされ、アイルランド公爵としての地位も失墜しました。

紋章の影響

ロバートに与えられた紋章は、3つの王冠を加えたものでした。この紋章は、その後およそ1世紀にわたり、アイルランド卿の紋章として使用され続けました。短命に終わった爵位でしたが、その紋章は歴史に名を残したと言えるでしょう。

まとめ

アイルランド公爵は、政治的な思惑と個人の運命に翻弄された、儚い爵位でした。しかし、その存在は中世イングランドの歴史の一片を鮮やかに彩っています。

参考文献
青山吉信 編『イギリス史〈1〉先史~中世』山川出版社〈世界歴史大系〉、1991年。ISBN 978-4634460102。
松村赳、富田虎男『英米史辞典』研究社、2000年。ISBN 978-4767430478。
* 森護『英国の貴族 遅れてきた公爵』大修館書店、1987年（昭和62年）。ISBN 978-4469240979。

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