アステル東北

アステル東北とは

アステル東北は、かつて東北地方で展開されていたPHS事業のサービスブランド名、およびその事業を運営していた電気通信事業者「株式会社アステル東北」の名称です。本稿では、アステルブランドで展開されたPHS事業とその関連事業について記述します。

概要

アステルグループの中で、最も長く音声PHSサービスを提供していました。サービス停波直前の2006年11月末時点での契約数は約1万3800件でした。音声PHSのサービスエリアは、東北6県と新潟県の県庁所在地、および八戸市、弘前市、郡山市、いわき市、長岡市、上越市とその周辺地域に限られていました。

業務地域

青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、新潟県がサービス提供エリアでした。

年表

株式会社 アステル東北設立からTOHKnetへの事業譲渡まで

1994年 10月31日 - 株式会社アステル東北設立。
1996年 3月28日 - PHS事業開始。
1998年 3月 - 「どこでも市内コール」を導入。
1999年 4月 - 「どこでも市内コール」の対象範囲を、当時のバックボーン提供会社であるTOHKnetのISDN契約回線に拡大。
1999年 5月25日 - 通話相手と同一市内でも市外局番が必須化。
2000年 5月25日 - 親会社である株式会社コアネット東北が、アステル東北の業務を東北インテリジェント通信（TOHKnet）に事業譲渡し、株式会社アステル東北を清算すると発表。
2000年 8月8日 - 株式会社アステル東北の事業をTOHKnetへ譲渡することを郵政省（当時）が認可。

TOHKnetによる事業譲受からサービス停止まで

2000年 9月1日 - 東北インテリジェント通信株式会社が株式会社アステル東北からPHS業務の事業を譲受。
2000年 12月 - 株式会社アステル東北が会社清算。
2001年 9月10日 - 「おトーク・どっと・ネット」の導入を発表。
2001年 9月17日 - 「おトーク・どっと・ネット」のサービス開始。
2004年 9月6日 - 11月末での他地域とのローミング終了とコンビニエンスストアでの使用料支払終了を発表。
2004年 11月30日 - 他地域のアステルとのローミング終了、及び「着メロ」などのサービスも終了。
2004年 12月1日 - コンビニエンスストアでの料金支払い受付を中止。
2005年 1月27日 - TOHKnetの親会社である東北電力が撤退の検討を表明。
2005年 7月28日 - 新規受付終了。
2005年11月以降 - 順次、各県での119番接続を停止。
2006年 3月31日 - 「おトーク・どっと・ネット」のサービス終了。
2006年 11月10日 - 12月20日付でのサービス終了を発表。利用は12月19日23:59まで。
2006年 12月20日 - サービス終了。これによりアステルグループは完全に消滅。

料金体系

料金プラン

標準プラン: 月額基本料2,520円（税込）
スーパーファミリー割引プラン: 月額基本料1,260円（税込）。標準プラン契約者が複数回線持つ場合のみ加入可能で、2〜5回線目に適用。
きめトークプラン（接続先限定サービス）:
1ヶ所限定：月額基本料367円（税込）。登録した一ヶ所へのみ発信可能。
3ヶ所限定：月額基本料735円（税込）。登録した三ヶ所へのみ発信可能。
まっtelプラン（着信専用サービス）: 月額基本料0円。単独契約不可、標準プラン回線1回線に付き1契約まで。

他地域で見られるような、通話料込みのプランや、基本料金が安い代わりに通話料が高くなるプランは導入されませんでした。

通信端末

詳細はアステル内の通信端末に関する記事を参照してください。
アステル東北では、AP-33が最後の提供機種となりました。AJ-35やAJ-51は発売されず、AJ-51は東北インテリジェント通信社内向けに配布されたのみです。

アステル東北独自のサービス

おトーク・どっと・ネット

TOHKnetへの事業譲渡後の2001年 9月17日より開始された、32kbpsのモバイルデータ通信定額制サービスです。
通常プランまたはきめトークプラン（一ヶ所・三ヶ所指定）のオプションとして、月額1,050円（税込）で利用できました。一ヶ所指定のきめトーク契約で利用すると、月額1,417円で使い放題という価格設定でした。

サービスエリアは宮城県の仙台周辺地域で、対象エリア外では「どこでも市内コール」の通信料金が適用されました。プロバイダはニフティが当初からサービスを提供していました。

2006年 3月31日にニフティがサービスを終了したことに伴い、TOHKnet側もサービスを終了しました。オプション自動解約はされなかったため、サービス終了までに回線解約が必要でした。

どこでも市内コール

アステル電話同士で通話した場合、双方が東北・新潟エリア内であれば、どこにいても市内通話扱いとなる料金体系です。例外として、双方が同一市内の場合や、通話時間帯が深夜の場合は、より低い料金が適用されました。

電力系の東北インフォメーション・システムズ（TOiNX）が提供するプロバイダのアクセスポイントも、「どこでも市内コール」が適用されていました。「おトーク・どっと・ネット」のアクセスポイントも同様の扱いでした。

日本大学工学部でのサービス

日本大学工学部のキャンパスでは、1999年 4月1日より「キャンパスモバイルネット」（CMN）の名称で、学内内線とPHS・インターネット回線を組み合わせた総合キャンパスネットワークサービスが展開されていました。

大学関係者向けに有償でPHS回線を提供し、学内では内線、学外ではPHSとして使用できる端末を提供していました。学内では、CMNショップというカウンターが設置され、アステルショップ郡山と連携してサポートが行われていました。

このサービスの利用者は、郡山市内のアステルエリアからキャンパス内のアクセスポイントに接続した場合、データ通信が無料で利用できました。この仕組みは、「おトーク・どっと・ネット」のサービスにも活かされました。学生は卒業時にサービス対象外となり、解約かアステル通常契約への切り替えが必要でした。

停波時のウィルコムへの移行

アステル東北の請求書には契約期間の表示がなかったため、ウィルコムへの移行時に、期間の引き継ぎや新規手数料のキャッシュバックが適用されないという問題がありました。しかし、停波発表後、ウィルコムへの移行を希望した一部の利用者には、契約日の入った請求書を再発行し、移行後1ヶ月以内にウィルコムへ送付することで、上記サービスが適用されるようにアナウンスされました。

ウィルコムへの移行は、電話番号の変更が必要で、端末は無償で提供されましたが、新規事務手数料は利用者の負担となりました。移行後の料金プランは、末日締めの料金請求か、15日締めの料金請求の選択が必要でした。移行希望者に配布される端末はAH-J3003Sに固定されており、他の機種を希望する場合は、自分で新規購入する必要がありました。

出納関係

料金支払いは、コンビニエンスストアを除き、銀行振込、郵便局での支払い、口座引き落としが利用できました。引き落としは、一部を除き、ほとんどの金融機関に対応していましたが、クオーク(現・セディナ)が代行する場合もありました。

アステルショップでは、端末やオプションの購入、故障修理代金の支払いは、通話料と一緒に請求されるシステムでした。利用可能なクレジットカードは、ユーシーカード、VISA、MasterCard、JCBのブランドの付いたカードに限られていました。

契約者住所と請求書送付先を別に登録することができましたが、重要な連絡文書は契約者住所に送付されるようになっていました。

販売店

アステルショップ

アステル PHSサービス開始時に、都市部にアステル東北直営のキャリアショップ「アステルショップ」が開業しました。県庁所在地では、TOHKnetの営業所と同居していました。後に、量販店での販売が縮小し、県庁所在地のみの営業となりました。

TOHKnetの本社移転に伴い、仙台の店舗は「TOHKnet仙台ショップ」として、元の電力ビルに戻りました。店舗では、アステルに関する用件は、2階の本社スタッフが対応する形になっていました。公式サイト上の住所表示や電話番号は本社のものでしたが、実際は従来通りの対処・電話番号が使われていました。

アステルショップ一覧

以下は、2006年 12月19日時点のアステルショップの一覧です。仙台を除き、NTT東日本回線による同社の営業所の電話番号と共通でした。

TOHKnet仙台ショップ　仙台市青葉区一番町三丁目7番1号電力ビル1Fフルール内
アステルショップ青森　青森市花園2丁目9番37号
アステルショップ秋田　秋田市旭北錦町5番50号シティビル秋田4F
アステルショップ盛岡　盛岡市紺屋町6番31号丸中産業ビル2F
アステルショップ山形　山形市本町二丁目1番2号山形フコク生命ビル1F
アステルショップ福島　福島市置賜町1番29号佐平ビル9F
アステルショップ新潟　新潟市東万代町9番14号旧ユアテック万代ビル2F
お客様サービスグループ（電話受付のみ）　仙台市青葉区一番町三丁目7番1号電力ビル2F

かつては、弘前、八戸、いわき、郡山、上越、長岡にもアステルショップが存在しましたが、県庁所在地のアステルショップに統合されました。

イメージキャラクター

アステル東北では、中期に鈴木紗理奈を起用した以外は、アステル東京と同じキャラクターを採用していました。

レレレのおじさん（アステルCMでは「ルルルのおじさん」）
鈴木紗理奈
榎本加奈子
飯島直子