アソポス川 (ボイオティア)

アソポス川 (Ασωπός ποταμός)

アソポス川は、ギリシャ東部、主にボイオティア県とアッティカ県の北部を流れる重要な川である。古代ギリシャにおいては、有力な都市国家であったテーバイとプラタイアの間に自然の境界を形成し、その戦略的な位置ゆえに歴史上の重要な出来事と深く関わった。

地理

アソポス川の水源は、テーバイの南西に位置するキタイロン山（またはキサイロナス山）の北斜面に端を発する。そこから北東方向へと流れ下り、レフクトラ、アギオス・トーマス、オイノフィタ、シカミノといった集落を経て、アッティカ北部のスカラ・オロポウ付近で南エヴィア湾に注ぎ込む。その全長は約57キロメートル、流域面積は718平方キロメートルに及ぶ。古代の記録によれば、この川は特に丈の高いイグサを育むことで知られていたと、旅行家パウサニアスはその著書『ギリシア記』の中で記している。

神話

アソポス川は、その名の由来や多くの神話的人物との関連において、古代ギリシャの伝承に深く根ざしている。プラタイアの人々は、この地を治めた原初の王キタイロンに続き、アソポスという王が現れ、それぞれの名がキタイロン山とアソポス川に与えられたと伝えている。また、プラタイアの町の名前も、河神アソポスの娘プラタイアにちなむとされるが、パウサニアスはこれを河神ではなくアソポス王の娘と考えていたようである。

アソポスは多くの女神や英雄の母となる娘たちを持ったとされる。例えば、アソポス川の支流であるオエロエ川は、歴史家ヘロドトスやパウサニアスによって河神アソポスの娘と記されている。また、ボイオティアの都市テスピアイはアソポスの娘テスペイアにちなんで名付けられたという説がある。ゼウスとの間にテーバイの王となる双子の息子アンピオンとゼトスを生んだアンティオペも、しばしばアソポスの娘とされる。詩人ピンダロスは、アイアコスの母アイギナと、ゼトスと結婚したテーベは双子の姉妹であり、アソポスの末娘であると歌っている。

ただし、アソポスの娘とされる女性たちの中には、コリントス地方を流れる同名のアソポス川（プリウス地方のアソポス川）に結びつく伝承との混同が見られることがある。歴史家シケリアのディオドロスは、13人もの娘の名前（コルキュラ、サラミス、アイギナ、ペイレネ、クレオネ、テーベ、タナグラ、テスペイア、アソピス、シノペ、オルニア、カルキス、ハルピナ）を挙げているものの、アソポスが住んでいたのはプリウス地方のアソポス川であったと述べている。

また、詩人スタティウスの叙事詩『テーバイド』には、アソポスの息子ヒュプセウスが登場する。彼はアラルコメナイ、イトネ、ミデア、アルネ、アウリス、グライア、プラタイア、プレテオン、アンテドンといった様々な都市から兵を率いた武将であったが、テーバイ攻めの際にアルゴスの七将の一人カパネウスによって討ち取られたとされている。

環境問題

現代のアソポス川は、古代からの歴史や神話とは対照的に、深刻な環境汚染という憂慮すべき問題に直面している。その主因は、1960年代後半から1970年代初頭にかけての軍事政権下で行われた下流域の工業地帯開発にある。特に、オイノフィタ周辺では工場が増設された。さらに、開発を促進するために1969年に施行された、工業廃水の未処理投棄を事実上容認する法令が2010年まで続いた結果、長年にわたり大量の汚染物質が川に流れ込んだのである。

その結果、アソポス川の水質だけでなく、流域の地下水や土壌も深刻に汚染されている。検出された汚染物質の中でも特に問題視されているのは、発癌性の高い六価クロムであり、その他にもコバルト、ニッケル、ヒ素などの重金属が含まれる。汚染の懸念は以前から存在したが、2007年にアテネ大学が行った調査により、地下水から高濃度の有害物質が検出されたことで、問題の深刻さが改めて浮き彫りになった。

この問題は、アメリカの環境運動家エリン・ブロコビッチが取り上げて国際的な嘆願を開始したことで広く知られるようになった。2009年には、欧州委員会の環境担当委員がギリシャ政府の対応を批判するなど、欧州レベルでも問題視され、ブロコビッチ自身も欧州議会で演説を行った。

汚染状況に関する調査では、アソポス川の一部の地点で六価クロム濃度が法的な基準値の100倍を超えていることが明らかになっている。また、流域の一部の地域、特にオイノフィタでは、癌による死亡率が1989年からの期間に6パーセントから32パーセントへと顕著に増加したという調査結果も報告されている。農作物への汚染リスクも指摘されており、住民の健康被害が喫緊の課題となっている。2011年には国際人権連盟が欧州評議会の社会権委員会に訴えを起こすなど、法的な働きかけも行われている。しかし残念ながら、根本的な状況改善には現在も至っておらず、アソポス川とその流域は深刻な汚染問題に苦しみ続けている。

アソポス川は、古代史の舞台となり、数々の神話に彩られた存在であった一方で、現代においては、無計画な開発と環境規制の不備がもたらした悲劇的な汚染の象徴となっている。その回復は、ギリシャおよび国際社会にとって重要な課題である。

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