アダム派

アダム派とは

アダム派（Adamites, Adamians）は、2世紀から4世紀にかけて北アフリカで活動した古代キリスト教の一派です。彼らは、宗教儀式の際に衣服を身につけないという特異な習慣を持っていました。その後、中世ヨーロッパにも同様の宗派が現れたとされています。

古代のアダム派

古代のアダム派の起源は定かではありませんが、2世紀頃に誕生し、アダムとエバの純粋な状態への回帰を主張したと考えられています。その教義については、様々な解釈が存在します。

カルポクラテス派の影響説: 道徳からの解放と官能的な神秘主義を唱えたカルポクラテス派から派生したとする説があります。アレクサンドリアのクレメンスが記録した放埓な性的行動と関連付けられることもあります。
禁欲主義説: 一方で、質素な生活と結婚の廃止を通じて肉欲を根絶しようとした「誤った禁欲主義者」とする見方もあります。

サラミスのエピファニウスやヒッポのアウグスティヌスは、アダム派の宗教儀式について記述しています。彼らは自分たちの教会を「楽園」と呼び、アダムとエバが知識の実を食べる前の無垢な状態に戻ったと主張しました。その結果、「聖なる裸体主義」を実践し、宗教儀式の際には衣服を身につけませんでした。また、エデンの園には結婚の概念が存在しなかったとし、結婚がなければ罪も存在しないという反律法主義を唱えました。そのため、彼らは他の宗派から「悪魔崇拝」と非難されました。古代のアダム派は、初期のプロテスタントの先駆者とみなされることもあります。

新アダム派

古代のアダム派と同様の宗派は、その後もヨーロッパ各地で出現しました。

自由心霊兄弟団: 13世紀のオランダでは、自由心霊兄弟団がアダム派とも呼ばれました。彼らは秘密の儀式で衣服を脱ぎ、アダムとエバが完全な愛に戻ることで完全性が達成されると信じていました。
中世の異端: 14世紀には、裸で儀式を行う異端者がアダム派として記録されています。
ボヘミアのアダム派: 15世紀には、ボヘミアのターボル派から分派した「ボヘミアのアダム派」が登場しました。これらの宗派は、いずれも当時のキリスト教会の主流派から激しく非難されました。
イングランドの宗派: 17世紀の清教徒革命後のイングランドにおける宗派を記録した文書にもアダム派の名前が見られます。

ターボル派とボヘミアのアダム派

ターボル派は、1419年に始まったフス派の急進派です。その一派であるボヘミアのアダム派は、ターボル派から離脱し、裸で街や村を歩くという特異な行為を始めました。

彼らは、「終末の日の聖者に神は宿る」と説き、排他的な結婚は罪であるとみなしました。歴史家のノーマン・コーンは、「ターボル派が厳格な一夫一婦制であったのに対し、この宗派では自由恋愛がルールだった。アダム派は、純潔な者はメシアの王国に入る資格がないと宣言した」と述べています。彼らは、火の周りで裸で踊る儀式を盛んに行い、寒暖を無視して裸で過ごし、これをアダムとエバが享受した無垢の状態であると主張したとされています。

ボヘミアのアダム派は、ネジャールカ川の島を占拠し、共同生活を送りながら、社会的・宗教的な裸体主義と自由恋愛を実践しました。彼らは結婚や個人の所有権を否定しました。1421年、ターボル派の指導者ヤン・ジシュカによってほぼ全滅させられました。しかし、翌年にはボヘミアとモラヴィア地方に広がりました。アダム派は聖変化、司祭職、聖餐を否定したため、特にターボル派から嫌われました。アダム派とターボル派の争いは、チェコの映画監督オタカル・ヴァーヴラによるフス派に関する映画にも描かれています。

関連項目

フス戦争
クリスチャン・ネイチャリズム
アナーキズムとネイチャリズム
フリーダマイツ
宗教における裸
乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ

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