ターボル派

ターボル派とは

ターボル派は、15世紀のボヘミア（現在のチェコ）に存在したフス派の中でも特に過激な一派です。フス派は、宗教改革者ヤン・フスの火刑処刑をきっかけに発生した運動で、ターボル派は、その中心都市であったターボルを拠点として活動しました。彼らは、当時の社会秩序や教会の権威に真っ向から異を唱え、独自の思想と社会構造を築こうとしました。

ターボル派の特徴

ターボル派の思想は、キリスト教の千年王国思想に基づき、世俗的な支配からの解放を目指していました。彼らは、財産の共有、主従関係の否定、無税社会の実現を主張し、原始的な無垢な状態への回帰を目指しました。この思想は、後の無政府共産主義の先駆けと評されることもあります。また、彼らはスコラ学的な思考を批判し、中世カトリック教会の教義を徹底的に否定しました。この過激な姿勢は、当時の教会関係者からは異端とみなされました。

主な理論家と活動

ターボル派には、多くの理論家や指導者が存在しました。

Mikuláš Biskupec：ぺルフジモフの司教であり、ターボル派の理論形成に貢献しました。
プロコプ・ヴェリキー：優れた軍事指導者でしたが、リパニの戦いで戦死しました。
Peter Kániš：アダム派の支持者でもありましたが、軍事指導者ヤン・ジシュカによって火刑に処されました。
Martin Húska：ターボル派の理論家の一人です。

中でも特筆すべきは、ヤン・ジシュカです。彼は貧しいボヘミア出身でありながら、優れた軍事指導者として頭角を現しました。ジシュカは、自ら軍隊を組織し、神聖ローマ帝国のジギスムント率いる十字軍を幾度となく撃退しました。彼は、捕虜を皆殺しにすることを良しとせず、慈悲を与えることもあったとされています。また、ジシュカは聖書の申命記を参考に、独自の兵法書「Žižkův vojenský řád」を作成しました。しかし、ターボル派が次第に過激化するにつれて、ジシュカは穏健派であるオレープ派に移り、フラデツ・クラーロヴェーを拠点としました。それでも、外敵の侵攻に際しては、ターボル派とオレープ派は宗派を超えて共闘することが多くありました。

ターボル派の衰退

フス派が外敵を撃退した後、内部での対立が激化しました。1434年、ターボル派はリパニの戦いで大敗を喫し、その勢力は大きく衰退しました。1437年には、ジギスムント皇帝と講和し、1452年にはターボルの支配権と政治的影響力を失いました。しかし、ターボル派の思想は完全に消滅したわけではなく、1457年にはモラヴィア兄弟団によって受け継がれました。彼らの思想は、その後の社会運動にも影響を与えたと考えられています。

脚注

ターボル派は、その過激さから中世カトリック教会からは異端とみなされた。
彼らの思想は、無政府共産主義の先駆けともいわれる。
ヤン・ジシュカは、軍事指導者として名を馳せたが、過激化したターボル派から離脱した。
ターボル派は、リパニの戦いでの敗北後、勢力を失ったが、その思想は後の社会運動に影響を与えた。

参考資料

石川達夫『プラハ歴史散策 黄金の劇場都市』講談社、2004年1月20日。
ピエール・ボヌール 著、山本俊朗 訳『チェコスロヴァキア史』白水社、1969年4月5日。
The Hussite Wars (1419–36), Stephen Turnbull, Osprey Publishing

関連項目

乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ
宗教戦争
宗教改革
プラハ窓外放出事件

外部リンク

Joan of Arc's Letter to the Hussites (23 March 1430)
The Hussite Wars
The Bohemian War (1420–1434)

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