アッバース2世

アッバース2世（1632年 - 1666年）は、サファヴィー朝の第7代シャーとして、激動の時代を生きました。

父サフィー1世の崩御後、幼くして即位したアッバース2世は、当初、宰相サルー・タキと祖母ディルラム・ハーヌムによる摂政政治を受けました。1645年に親政を開始しますが、その治世は決して平穏ではありませんでした。

政治・経済の苦境

アッバース2世の時代、サファヴィー朝は深刻な財政難に直面していました。宮廷の浪費に加え、イギリスやオランダとの貿易において、輸出品である絹の売れ行きが低迷。逆に、両国が金銀を輸出することで、イラン国内の金銀不足が深刻化しました。宰相ムハンマド・ベグは、直轄領の増加や軍事費の削減などの対策を講じましたが、財政状況は改善されませんでした。

宗教政策の葛藤

宗教面では、アッバース2世は先代からの寛容政策を維持し、キリスト教イエズス会の布教を許可しました。しかし、シーア派イスラムからの反発は強く、キリスト教への自由制限やユダヤ教徒への迫害、イスラム教への強制改宗など、シーア派の意向に沿った政策も行いました。しかし、シーア派への弾圧も行ったため一部のムスリムからの支持を失うなど、宗教政策は常に葛藤を抱えていました。

軍事的な功績と晩年

軍事面では、1648年にムガル帝国からカンダハールを奪還する大きな功績を挙げました。また、1653年にはロシアの支援を受けたコサックのコーカサス侵攻を阻止するなど、外敵からの防衛にも成功しています。しかし、1665年にウズベクがホラーサーンを略奪した際には自ら出陣したものの、翌1666年に深酒が原因で33歳の若さで急逝しました。

評価とその後

アッバース2世は、庶民の生活にも気を配り、裁判に介入して農民を保護するなど、民政にも力を注ぎました。カンダハール奪還は、サファヴィー朝の衰退に歯止めをかけるものでもありました。

しかし、深酒が原因で早世したことが、その後のサファヴィー朝に暗い影を落とします。後を継いだサフィー2世（スライマーン）が幼少であったため、後宮が政治に介入するようになり、腐敗が蔓延。サファヴィー朝は、次の代で没落へと向かいました。

アッバース2世の治世は、ヨーロッパ文化の流入により、芸術・建築が花開いた時代でもありました。イスファハーンに建てられたチェヘル・ソトゥーン宮殿やハージュ橋は、サファヴィー建築の傑作として現在もその姿を留めています。アッバース2世の功績と負の遺産は、サファヴィー朝の歴史に深く刻まれています。

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