サファヴィー建築

サファヴィー建築は、16世紀から18世紀にかけてイランを支配したサファヴィー朝で発展した建築様式です。オスマン建築と並び、近世イスラーム建築の重要な一角を担っています。特にアッバース1世の時代にその最盛期を迎え、モスクの形式を洗練させましたが、その後は細部の技巧に執着する傾向を示し、現代のイスラーム建築に大きな影響を与えるような新しい動きはあまり見られませんでした。

歴史

サファヴィー建築前期

サファヴィー朝は、イスマーイール1世が白羊朝を破りタブリーズを占拠したことから始まります。初期には、シャイバーン朝やオスマン帝国との戦争が続き、国政が安定しませんでした。そのため、織物や陶器、金属細工などの芸術は発展しましたが、建築はアッバース1世の時代を待つことになります。

アッバース1世は、サファヴィー朝中興の祖とされ、彼の時代にサファヴィー建築は本格的に幕開けを迎えます。1598年、アッバース1世はエスファハーンに都を定め、大規模な都市建設を行いました。エスファハーンは、当時の街の状況が比較的正確に復元できるほど、多くの遺構や歴史資料が残っています。サファヴィー朝前期の建築を知る上で、エスファハーンの建築物は非常に重要な役割を果たしています。

世界遺産にも登録されているメイダーネ・ナクシェ・ジャハーン（世界の肖像の広場）は、1505年頃にはすでに一部が整備されていましたが、アッバース1世によって再建され、四方にバザールが配置されました。広場の中央は、定期市や競技、公共事業などに利用されました。

マスジド・イ・シャー（シャー・モスク）は、1611年から建設が始まり、1638年に完成した会衆モスクです。建築家アブール・カーシムによって設計され、四イーワーン形式モスクの最高傑作の一つとされています。入り口は北側に位置し、青く輝くタイル・モザイクが印象的です。内部には、巨大なドームを頂く聖域や交差ヴォールトで覆われた冬用モスク、開放的な中庭があります。

シェイフ・ルトゥフッラーのモスクは、1618年に完成したとされ、皇帝の私的礼拝に使われたと考えられています。ミナレットがないのが特徴で、入り口はメイダーンに面した中庭にあります。ドーム内部は非常に美しく、キオスク型モスクの究極の姿とされています。

マスジド・イ・シャーとシェイフ・ルトゥフッラーのモスクは、どちらも彩色タイルで覆われたドームを持ち、その美しさは量塊を感じさせないほどです。これらの建築物は、イスラーム美術の粋を今に伝えています。

後期のサファヴィー建築

サファヴィー朝の最盛期を過ぎると、建築の進展はほとんど見られなくなります。シャー・アッバース2世によって建設されたポル・イ・ハージュー（ハージュ橋）は、橋梁でありながら優れた建築物として注目されます。この橋は、ダムとしての機能も持ち、川によって冷却された風がヴォールトを抜けるため、心地よい場所となっています。

ハシュト・ベヘシュトは、庭園の中に組み込まれた園亭で、ドームを頂く八角形の部屋を中心に、四つの八角形の部屋が配置されています。本来は白羊朝の庭園に建設されたパヴィリオンでしたが、より小型のものがエスファハーンやムガル朝でも建設されました。エスファハーンのハシュト・ベヘシュトは、1669年にサフィー2世スライマーンによって建てられましたが、現在は大幅に改築されています。1840年の記録によると、中央広間には噴水が設けられ、北側のアーチからは庭園全体を眺めることができました。

特徴

サファヴィー建築は、モスクと霊廟の建築が中心で、住宅や商隊宿泊施設、商業施設は、サファヴィー朝以前のものから大きな変化はなかったと考えられています。ペルシャ人は建築意匠には保守的でしたが、焼成レンガを用いた複雑な構造を作り出す技術は、当時のイスラーム諸国の中で最も優れていました。この技術は、土木工事にも活用されました。

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