アッピア街道州立公園

イタリア共和国ラツィオ州の州立公園であるアッピア街道州立公園（イタリア語: Parco Regionale dell'Appia Antica）は、古代ローマの主要街道の一つ、アッピア街道の起点にほど近いローマ南東郊外に位置しています。この広大な緑地公園は、ローマ市、チャンピーノ、マリーノの各市域にまたがり、総面積はおよそ3,370ヘクタールにも及びます。都市近郊にありながら、手つかずの自然が多く残されており、古代の歴史遺産が数多く点在する貴重な地域です。

歴史を刻むアッピア街道

公園の中心を貫くアッピア街道は、紀元前4世紀末に建設が始まった古代ローマ時代の重要幹線道路です。ローマから南イタリアへと延びるこの道は、軍事、経済、交通の要衝として、ローマ帝国の拡大と維持に不可欠な役割を果たしました。公園内には、アッピア街道の起点から数えて最初の10マイルに相当する区間が含まれており、当時の街道の姿を今に伝えています。古代ローマ時代に距離を示すために設置されたマイルストーン（milestone）の一部が公園内でも確認できます。例えば、第1マイルストーンはサン・セバスティアーノ門とVia Ciliciaの間に、第3マイルストーンは有名なチェチーラ・メテッラの墓の近くに位置するなど、これらの石標は古代の旅路を偲ばせる手がかりとなります。

数々の考古遺跡

アッピア街道州立公園の最大の魅力は、その広大な敷地に散りばめられた豊富な考古遺跡です。代表的な見所としては、以下のようなものがあります。

サン・セバスティアーノ門: アウレリアヌス城壁の一部をなす、公園への主要な入口の一つです。
ドミネ・クォ・ヴァディス教会: 聖ペテロがローマからの逃亡中にキリストに出会ったとされる伝説の地に建つ教会です。
カタコンベ: 初期キリスト教徒やユダヤ教徒の地下墓所が複数あります。サン・カッリストのカタコンベやサン・セバスティアーノのカタコンベは特に有名で、地下空間に広がる共同墓地やフレスコ画を見学できます。また、Ipogeo di VibiaやCatacombe Ebraiche di Vigna Randaniniといったカタコンベも存在します。
マクセンティウスの競技場とウァレリウス・ロムルスの墓: 4世紀初頭に皇帝マクセンティウスによって造営された競技場と、その息子ロムルスの霊廟跡です。競技場の構造がよく保存されています。
チェチーラ・メテッラの墓: 紀元前1世紀に造られた、円形の巨大な霊廟です。その堅牢な構造と威容は、古代ローマの墓制建築の典型例として知られています。
ローマ水道橋公園: 公園の南東部に位置し、古代ローマが造った水道（クラウディア水道、フェリクス水道など）のアーチ群が広がる壮大な景観です。古代の土木技術の高さを示す象徴的な場所です。
クィンティルスのヴィッラ: 皇帝コモドゥスに没収された裕福な兄弟の広大な邸宅跡です。
Chiesa di S. Urbano、Tombe Latineなども公園内に点在し、多様な時代の歴史的痕跡を見つけることができます。

これらの遺跡は、ローマ帝国時代の生活、文化、宗教、建築、土木技術などを理解する上で非常に貴重な手がかりを提供しています。

公園へのアクセス

アッピア街道州立公園へは、ローマ市内からいくつかの方法でアクセスできます。公園事務所、ビジターセンター、レンタル自転車貸出所を目指す場合は、ATAC路線バスの118系統または218系統を利用し、「Appia Antica - Domine Quo Vadis」バス停で下車するのが便利です。主要な遺跡を巡る観光バス「archeobus」も利用可能です。カファレラ公園案内所は、地下鉄A線「コッリ・アルバーニ駅」から南西へ徒歩約400mの距離にあります。ローマ水道橋公園方面の案内所へは、地下鉄A線「スバウグスタ駅」から南西へ約800mです。

アッピア街道州立公園は、古代ローマの歴史を肌で感じながら、豊かな自然の中での散策やサイクリングを楽しめるユニークな場所です。現代のローマの喧騒から離れ、静かに過去へと思いを馳せるのに最適な場所と言えるでしょう。

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