アナーキー・イン・ザ・U.K.

アナーキー・イン・ザ・U.K.：パンクロックの象徴

「アナーキー・イン・ザ・U.K.」（Anarchy in the U.K.）は、セックス・ピストルズが1976年11月26日にリリースしたデビュー・シングルであり、パンク・ロックを代表する楽曲の一つです。1977年のアルバム『勝手にしやがれ!!』にも収録され、その過激な歌詞とサウンドは、当時の社会に大きな衝撃を与えました。クレジット上はメンバー4人の共作となっていますが、作曲は主にベーシストのグレン・マトロックが担当し、ジョニー・ロットンが作詞を手掛けました。

この楽曲は、『ローリング・ストーン』誌が選出した「オールタイム・グレイテスト・ソング500」（2010年版）で56位にランクインするなど、音楽史における重要な位置を占めています。また、ロックの殿堂公式サイトで選出された「ロックン・ロールを形作った500曲」にも選ばれており、その影響力の大きさが伺えます。

制作の背景

「アナーキー・イン・ザ・U.K.」の制作は、いくつかの段階を経て行われました。1976年7月には、デイヴ・グッドマンのプロデュースによるデモ・レコーディングが行われました。この時の音源は、海賊版として出回っていたアルバム『スパンク』が2006年に正規発売された際、CDのボーナス・トラックとして収録されています。同年10月10日には、再びグッドマンのプロデュースによりレコーディングが行われましたが、このバージョンは発表が見送られ、後に『スパンク』に収録されました。

最終的に、バンドはクリス・トーマスをプロデューサーに、ビル・プライスをエンジニアに迎え、ロンドンのウェセックス・スタジオでレコーディングを行いました。トーマスは、スティーヴ・ジョーンズのギター・リフを何度もオーバー・ダビングすることで、楽曲に独特の厚みと勢いを与えました。

リリースとその後

「アナーキー・イン・ザ・U.K.」は、ロンドン・パンク初のシングルとして知られるダムドの「ニュー・ローズ」より1カ月後に発売されました。B面にはデイヴ・グッドマンがプロデュースした「アイ・ワナ・ビー・ミー」（『勝手にしやがれ!!』には未収録）が収録されましたが、初回盤にはB面にもクリス・トーマスの名前が記載されるというクレジット・ミスがありました。

オリジナル・リリース時は全英シングルチャートで最高38位を記録し、イギリス国内で5万5千枚以上を売り上げました。しかし、リリースから1カ月半も経たない1977年1月6日、所属レーベルのEMIはバンドの素行不良を理由に契約を解除するという声明を発表しました。この出来事は、セックス・ピストルズの破天荒なイメージを 더욱 усилило。アルバム『ザ・グレイト・ロックン・ロール・スウィンドル』（1979年）には2種類の別バージョンが収録され、そのうち「アナーキー・イン・ザ・U.K.（シド・イン・パリス）」はフランス語詞となっています。

その後もこの曲は何度か全英チャートに再登場しています。1992年にはヴァージン・レコードから再発シングルが発売され、全英シングルチャートでオリジナル・リリース時を上回る33位に達しました。また、2007年10月13日付の全英シングルチャートでは70位となっています。

ジョン・ライドン（ジョニー・ロットン）がセックス・ピストルズ脱退後に結成したパブリック・イメージ・リミテッドのライブでも「アナーキー・イン・ザ・U.K.」が演奏されることがあり、1983年10月31日にドイツのテレビ・ショーに出演した際のライブ音源は、アルバム『Live at Rockpalast 1983』に収録されています。

他メディアでの使用例

「アナーキー・イン・ザ・U.K.」は、映画『ハロルド・スミスに何が起こったか?』（1999年公開）、『24アワー・パーティー・ピープル』（2002年公開）、『伝説のロックスター再生計画!』（2010年公開）などのサウンドトラックで使用されています。

日本では、2018年公開の映画『パンク侍、斬られて候』の主題歌として起用されました。セックス・ピストルズの楽曲が日本映画の主題歌として使用されたのは、この楽曲が初めてです。

コンピュータゲームの分野では、『Tony Hawk's Pro Skater 4』のサウンドトラックで使用されました。また、2007年には、オリジナル・メンバーのうちジョニー・ロットン、スティーヴ・ジョーンズ、ポール・クックの3人が音楽ゲーム『ギターヒーロー3 レジェンド オブ ロック』のために「アナーキー・イン・ザ・U.K.」を再録音しました。

カバー・バージョン

「アナーキー・イン・ザ・U.K.」は、数多くのアーティストによってカバーされています。特に有名なのは、メガデスによるカバーです。

メガデスによるカバー

アメリカのスラッシュメタルバンド、メガデスは、1988年のアルバム『ソー・ファー、ソー・グッド…ソー・ホワット!』に「アナーキー・イン・ザ・U.K.」のカバーを収録しました。このカバーは同アルバムからの最初のシングルとしてリリースされ、ニュージーランドやイギリスのナショナル・チャートでランクインしました。メガデスのカバーには、セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズもギターで参加しています。

その他にも、モトリー・クルー、グリーン・ジェリー、ロリータ18号、LOW IQ 01、土屋アンナなど、様々なアーティストがこの曲をカバーしています。それぞれのアーティストが独自の解釈を加えており、「アナーキー・イン・ザ・U.K.」の多様な魅力を引き出しています。

「アナーキー・イン・ザ・U.K.」は、パンク・ロックの精神を象徴するだけでなく、音楽史における重要な楽曲として、これからも多くの人々に聴き継がれていくでしょう。

もう一度検索