24アワー・パーティー・ピープル

マンチェスター・ムーヴメントの真実：映画『24アワー・パーティ・ピープル』

2002年公開のイギリス映画『24アワー・パーティ・ピープル（24 Hour Party People）』は、1978年に設立され1992年に倒産した、伝説的なインディーズ・レコードレーベル、ファクトリー・レコードの興亡を描いた作品です。監督はマイケル・ウィンターボトム。映画のタイトルは、ハッピー・マンデーズの代表曲から取られています。

映画は、ファクトリー・レコードの社長、トニー・ウィルソンの視点から物語が展開します。1976年、セックス・ピストルズのマンチェスター公演をきっかけに、後の音楽シーンを彩るキーパーソンたちが集います。ミック・ハックネル（後のシンプリー・レッド）、ジョイ・ディヴィジョンのメンバー、ザ・スミスのモリッシーなど、後の音楽史に名を刻む才能たちが、この混沌とした状況のなかで出会うのです。

映画では、トニー・ウィルソンを中心に、アラン・イラズマス、ロブ・グレイトン、マーティン・ハネット、そしてアーティストのアルバムジャケットなどを手掛けたピーター・サヴィルといった、ファクトリー・レコードを支えた主要人物たちが描かれています。彼らは、音楽を通じて、時代のムード、カウンターカルチャーを体現していきます。

物語は、ファクトリー・レコードが手がけたクラブ「ハシエンダ」を中心としたマンチェスター・ムーヴメント、いわゆる「マッドチェスター」の隆盛と衰退を鮮やかに描き出します。音楽シーンの熱狂、創造性、そして裏に潜む葛藤や挫折、成功と破滅の両面が、リアルな描写で表現されています。特にジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーは、このムーヴメントの象徴的なバンドとして、映画の中でも重要な役割を果たしています。

キャストは、スティーヴ・クーガンがトニー・ウィルソン役を、レニー・ジェームズがアラン・イラズマス役を、パディ・コンシダインがロブ・グレイトン役を、アンディ・サーキスがマーティン・ハネット役を、そしてエンゾ・シレンティがピーター・サヴィル役を演じるなど、実力派俳優たちが集結しています。また、ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティス役をショーン・ハリス、バーナード・サムナー役をジョン・シム、ピーター・フック役をラルフ・リトルが演じるなど、音楽シーンを彩った重要な人物たちが丁寧に再現されています。

サウンドトラックもまた、映画の大きな魅力です。ジョイ・ディヴィジョン、ニュー・オーダー、ハッピー・マンデーズといった、マッドチェスターを代表するアーティストたちの楽曲が多数収録されています。特に、映画のタイトルにもなっているハッピー・マンデーズの「24アワー・パーティー・ピープル」のジョン・カーターによるリミックスバージョンは必聴です。さらに、ニュー・オーダーの新曲2曲が収録されており、そのうちの1曲「ニュー・ドーン・フェイズ」はジョイ・ディヴィジョンのカバーで、モービー、ビリー・コーガン、ジョン・フルシアンテといった豪華ゲストが参加しています。もう1曲の「ヒア・トゥ・ステイ」はケミカル・ブラザーズとの共同プロデュース作品です。ジャケットデザインもピーター・サヴィルが担当しています。

『24アワー・パーティ・ピープル』は、単なる音楽映画にとどまらず、時代の空気感、人々の生き様、音楽が生み出すエネルギーといった様々な要素が複雑に絡み合った、濃密な人間ドラマです。マンチェスター・ムーヴメントに興味のある方はもちろん、音楽映画好きにも強くお勧めできる作品と言えるでしょう。

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