アフリカ戦線 (第一次世界大戦)

第一次世界大戦におけるアフリカ戦線

第一次世界大戦（1914年～1918年）中、アフリカ大陸各地で展開された戦闘は、ドイツ帝国とその植民地、そして連合国軍の間で繰り広げられました。アフリカのドイツ植民地は、ドイツ領カメルーン、ドイツ領トーゴラント、ドイツ領南西アフリカ、ドイツ領東アフリカの４つが存在しました。

概要

大戦勃発時、制海権を握るイギリス帝国は、ドイツ植民地を征服する十分な戦力を有していました。アフリカのドイツ植民地の多くは、連合国の植民地に囲まれており、防衛体制も十分ではありませんでした。これらの植民地はそれぞれ孤立して戦わざるを得ませんでしたが、ドイツ領東アフリカのみは、パウル・フォン・レットウ＝フォルベック将軍の指揮下で、大戦終結まで抵抗を続けました。

アフリカ各地の戦線

北アフリカ戦線

北アフリカでは、モロッコ、アルジェリア・マリ・ニジェール、リビア、ダルフール、ソマリア・ソマリランドなどで、様々な戦闘が展開されました。

西アフリカ戦線

西アフリカでは、ドイツ領トーゴラントとカメルーンが戦場となりました。トーゴラントは開戦直後に連合軍に制圧され、カメルーンでは激戦が繰り広げられました。

トーゴラント戦線

小規模なドイツ植民地であったトーゴラントは、イギリスとフランス軍の侵攻により、開戦直後に占領されました。

カメルーン戦線

ドイツ領カメルーンでは、約3,000名のアフリカ人兵士を擁するドイツ軍と、イギリス、フランス、ベルギーの連合軍が激戦を繰り広げました。当初、連合軍の進撃はドイツ軍の抵抗に阻まれましたが、最終的に首都ドゥアラを占領。1916年にはドイツ軍は降伏しました。

南西アフリカ戦線

南西アフリカでは、南アフリカ連邦がイギリスに代わりドイツ軍と交戦。広大な砂漠地帯での戦いが展開されました。南アフリカ連邦軍は、練度の高い兵士と地元での経験を生かしてドイツ軍を圧倒しました。しかし、ドイツに共感するブール人の反乱も発生し、鎮圧作戦が必要となりました。1915年7月、ドイツ軍は降伏し、南西アフリカは南アフリカの支配下に置かれました。

ブール人の反乱

南アフリカ連邦では、第二次ボーア戦争でドイツの支援を受けていたブール人の間で反乱が発生。マリッツ将軍らの指導により、約12,000人が蜂起しましたが、南アフリカ連邦軍によって鎮圧されました。

南西アフリカの戦い

1915年3月、南アフリカ軍は4個縦隊で南西アフリカに侵攻し、ドイツ軍を各地で撃破。7月にはドイツ軍は降伏し、南西アフリカは事実上南アフリカの支配下に置かれました。

アンゴラ戦線

ドイツ軍は、ポルトガル領アンゴラに攻勢を仕掛けましたが、撃退されました。

東アフリカ戦線

東アフリカでは、ドイツ領東アフリカが主戦場となり、連合軍とドイツ軍との間で長期にわたる戦闘が展開されました。特に、パウル・フォン・レットウ＝フォルベック将軍率いるドイツ軍は、ゲリラ戦術を駆使し、連合軍を苦しめました。戦火は周辺のイギリス領、ポルトガル領、ベルギー領にも及びました。

東アフリカの情勢

ドイツ領東アフリカは広大で地形が複雑な地域でした。開戦当初、ドイツ植民地総督は敵対行動をしないように指示していましたが、レットウ＝フォルベック大佐はこれを無視し、軍を召集しました。ドイツ軍は、ドイツ人兵士と現地の兵士アスカリを動員しました。

開戦

1914年8月、戦闘が始まり、ドイツ軍は周辺地域へ侵攻しました。イギリス軍は、ヴィクトリア湖で制海権を失い、タンガへの上陸作戦はドイツ軍の激しい抵抗により失敗しました。

1915年

イギリス軍は、タンガニーカ湖でドイツ軍に対抗するため、モーターランチを送り込みました。この戦いで、連合軍はドイツ軍の船を撃沈し、湖の制海権を握りました。この頃、レットウ＝フォルベックの部隊には、多数のドイツ兵とアスカリが加わりました。

1916年

1916年、イギリス軍はヤン・スマッツ将軍を指揮官に迎え、レットウ＝フォルベックの撃破に乗り出しました。スマッツ将軍は、南アフリカ、イギリス、インド、アフリカの兵士を率い、ベルギー軍も加わりました。イギリス軍は、ポーターによる大規模な輸送兵団を編成し、物資を供給しました。

ベルギー領コンゴ軍は、タンガニーカに進撃し、各地を攻略しました。しかし、ドイツ軍との戦闘は、スマッツ軍にも多大な犠牲を強いました。

1917年

1917年、イギリス軍はベルギー領コンゴ軍の協力を得て、ドイツ軍との戦いを続けましたが、レットウ＝フォルベックの部隊を捕らえることはできませんでした。ドイツ軍はイギリス軍を破ることもありましたが、徐々に包囲されていきました。レットウ＝フォルベックは、ポルトガル領東アフリカに撤退しました。

1918年

レットウ＝フォルベックは、ポルトガル領東アフリカを転戦し、再びドイツ領東アフリカに戻り、その後ローデシアに侵入しました。

レットウ＝フォルベックの投降

1918年11月、ヨーロッパで休戦協定が締結されましたが、レットウ＝フォルベックは休戦を知らずに戦いを続けました。11月23日、彼は北ローデシアのアバーコーンで降伏しました。彼の部隊は、一度も敗北することなく、ドイツに英雄として迎えられました。

評価

この戦線では、戦死者よりも病死者が圧倒的に多く、戦いを続けた兵士たちを苦しめました。歴史家は、この戦いを、兵站が困難であり、過酷な環境下での戦いであったと評価しています。

戦後

第一次世界大戦により、ドイツ植民地帝国は終わりを迎えました。ドイツ植民地は、イギリス、フランス、ポルトガル、ベルギーなどの連合国に分割されましたが、植民地支配もまた、長くは続きませんでした。ほとんどの旧ドイツ植民地は、1960年までに独立を達成しました。

アフリカ戦線を舞台にした作品

小説

エドガー・ライス・バローズの『野獣王ターザン』や、セシル・スコット・フォレスターの『アフリカの女王』は、アフリカ戦線を舞台とした作品です。

映画

『アフリカの女王』は、同名の小説を映画化したものです。

脚注

[参考文献]

John Keegan (1999). The First World War.
Cyril Falls (1959). The Great War, 1914-1918.
Brigadier-General F. J. Moberly (1931). Togoland and the Cameroons 1914-1916.
Paice, Edward (2007). Tip and Run: The Untold Tragedy of the Great War in Africa.
Fred Reid (2002). In Search of Willie Patterson.
Abbott, Peter (2002). Armies in East Africa 1914-1918.
Anderson, Ross (2004). The Forgotten Front: The East African Campaign: 1914-1918.
Farwell, Byron (1989). The Great War in Africa, 1914-1918.
Gardner, Brian (1963). On to Kilimanjaro.
Hodges, Geoffrey (1986). The Carrier Corps - Military Labour in the East African Campaign 1914-18.
Hoyt, Edwin (1981). Guerilla: Colonel von Lettow-Vorbeck and Germany's East African Empire.
Hoyt, Edwin (1969). The Germans who never lost.
Miller, Charles (1974). Battle for the Bundu: The First World War in East Africa.
Mosley, Leonard (1963). Duel for Kilimanjaro.
Sibley, J.R. (1973). Tanganyikan Guerrilla.
Strachan, Hew (2004). The First World War in Africa.

[関連項目]

アフリカ史
カメルーンの歴史
南アフリカ共和国年表

[外部リンク]

Sol Plaatje, Native Life in South Africa: Chapter XXIII — The Boer Rebellion
* 90th anniversary of German defeat in South-West Africa from the Great War Society

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