アポロ6号

アポロ6号：サターンV型ロケットの無人試験飛行

アポロ6号は、アメリカのアポロ計画における2回目のサターンV型ロケットの無人発射実験でした。このミッションは、来るべき有人飛行（アポロ8号）に備えた最後の無人試験として重要な役割を担っていました。アポロ7号では、サターンIB型ロケットが使用されたため、サターンV型ロケットにとっては、アポロ8号に繋げるための重要なミッションでした。

ミッションの目的

アポロ6号の主な目的は、サターンV型ロケットの性能を最終確認することでした。特に、司令船を月からの帰還時における最悪の状況を想定して大気圏に再突入させる試験が含まれていました。しかし、ロケットエンジンの不調により、この再突入試験は完全には実現されませんでした。

準備段階

1967年3月13日、第一段ロケットS-IC、第三段S-IVB、そしてロケットの自動操縦装置がケープ・カナベラルに到着しました。S-ICはすぐにVAB（ロケット組立棟）で発射台に設置されました。5月24日には第二段S-IIが到着し、7月7日に設置されるまで、代用としてスペーサーが使用されました。当時、VABではアポロ4号の準備も並行して進められており、作業は遅延しました。アポロ司令・機械船は9月29日に到着し、12月10日にロケットに設置されました。この宇宙船は、アポロ1号の火災で焼失した司令船と、タンクの爆発事故で破壊された機械船の残骸を組み合わせて作られたものでした。2ヶ月間の試験後、アポロ6号は1968年2月6日に39A発射台に設置されました。

発射と飛行

アポロ6号は、発射直後からトラブルに見舞われました。発射から2分後、ロケットには30秒間にわたる共振現象が発生しました。この共振はロケットと宇宙船の接続部分に構造的な問題を引き起こし、発射から133秒後にはいくつかの部品が脱落する様子が確認されました。第一段の切り離し後、第二段のS-IIにも問題が発生しました。5基あるエンジンのうち、2番エンジンが発射後206秒から319秒にかけて不調になり、412秒後に完全に停止し、その2秒後には3番エンジンも停止しました。このため、自動操縦装置が作動し、第二段ロケットと第三段ロケットの噴射時間が延長されました。

その後、S-ICは大西洋に、S-IIは北大西洋に落下しました。

軌道

宇宙船は、当初予定していた高度160kmの円軌道から大きく外れ、近地点178km、遠地点367kmの楕円軌道に乗りました。さらに、地球を二周した後、第三段ロケットが再点火しなかったため、月軌道に乗ることはできませんでした。目標を達成するため、機械船のロケットを442秒間噴射し、遠地点22,200kmの楕円軌道に投入することが決定されました。しかし、燃料不足のため、大気圏再突入時の速度は予定の秒速11,270mに及ばず、秒速10,000mとなりました。着水地点も予定海域から80km外れ、10時間後に強襲揚陸艦オキナワによって回収されました。第三段は1968年4月25日に大気圏に再突入しました。

問題の原因

第一段の共振の原因は、ロケットの再調整が必要であると判明しました。燃料と酸化剤のポンプや供給ラインの空洞を埋めるヘリウムガスの圧力が振動を減衰させるために下げられていたことが原因でした。二段目ロケットのエンジン不調は、燃焼室に燃料を供給するパイプの破断によるものでした。J-2エンジンの燃焼室は、液体酸素と液体水素が供給される繊細な構造物です。今回の飛行では、3番エンジンが燃焼中に液体水素のパイプが振動で破壊され、酸素だけが供給されたため、燃焼室内の温度が上昇し、破壊に至ったのです。圧力の低下は自動操縦装置によって検知され、燃焼停止の指令が送られましたが、2番エンジンと3番エンジンの配線が共有されていたため、両エンジンが同時に停止しました。これらの問題は、地上試験では極低温の液体水素によってパイプが保護されていたため、発見が困難でした。宇宙船とロケットの接続部分の問題は、ハニカム構造が原因でした。月着陸船の格納室が大気圧の低下によって膨張し、破壊の原因となる可能性が判明したため、次回の飛行からは格納室に減圧用の小窓を開けることが決定されました。

これらの問題は、有人飛行であれば緊急脱出が必要となる深刻なものでしたが、得られたデータは非常に貴重であり、その後のサターンV型ロケットの信頼性を高める上で重要な役割を果たしました。

映像

アポロ4号と6号のロケット分離の映像は、ドキュメンタリー番組などで頻繁に使用されています。特に「S-IV-B Staging」の後半部分は6号の映像です。この映像では、白色光は高温の水蒸気、赤い炎は分離用の固体燃料ロケットの排気ガスです。また、発射台から離れるサターンVの映像も、アポロ11号などの発射シーンとして紹介されることがありますが、それらの多くは6号のものです。映像を見分けるポイントは、機械船が白色であることです。6号以外のアポロ飛行では、機械船は銀色でした。

社会的影響

アポロ6号が発射された日、キング牧師が暗殺され、その5日後にはジョンソン大統領が再立候補しないことを表明したため、社会的な注目は集まりませんでした。

現在

アポロ6号の司令船は、現在ジョージア州アトランタの博物館に展示されています。

外部リンク

Apollo Maniacs（アポロ・マニアックス）

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