アメノオシヒ

アメノオシヒの神話と系譜

アメノオシヒ（アマノオシヒ）は、日本の古代神話に登場する神であり、『古事記』や『日本書紀』などの古典文献にその名が見られます。彼は「天忍日命（あめのおしひのみこと）」と称されることが多く、他にも「天押日命」や「神狭日命」という表記も存在します。アメノオシヒは特に大伴氏の祖神として知られ、天孫降臨の際にニニギ（瓊瓊杵尊/邇邇芸命）の随伴者であったとされています。

系譜と系統

アメノオシヒの系譜については、古典文献には明記されていませんが、『古語拾遺』や『先代旧事本紀』の「神代本紀」では、彼が高皇産霊尊の子であるとされています。さらに『新撰姓氏録』では、彼を高皇産霊尊の五世または六世孫と位置付けています。大伴連の系図によると、アメノオシヒは高皇産霊尊の四世孫である天石門別安国玉主命の子孫ということです。

天孫降臨の記録

アメノオシヒは天孫降臨の場面において重要な役割を果たしており、『古事記』では天忍日命と天津久米命が共に登場し、ニニギを導く描写がなされています。彼らは強固な靫を負い、腰には頭椎の大刀を持ち、手には天のはじ弓と真鹿児矢を持ち合わせ、天孫の先導を担当しました。一方、『日本書紀』の記録では、天忍日命が天槵津大来目を率いて、さらに装備が整った形で天孫を先排する役割を果たします。このように、アメノオシヒにまつわる伝承は複数あり、文献間での異同が見受けられます。

大伴氏の後裔

大伴氏は、アメノオシヒを祖神として多くの氏族を形成しました。『古事記』や『日本書紀』においても彼らは大伴連がその系譜に属することが記されています。『先代旧事本紀』や『古語拾遺』でも、大伴宿禰の祖とされ、後に「宿禰」というカバネを賜ることになります。このように、アメノオシヒは大伴氏の職掌や起源を示す重要な存在となっています。

信仰の広がり

アメノオシヒは現在でもいくつかの神社で祭神として祀られています。例えば、大阪府の伴林氏神社や降幡神社、滋賀県の油日神社など、多くの地域でその信仰が続いています。また、三重県の上社ではアメノオシヒを「天忍漁人命」として祀るなど、彼の存在は地域の神道に深く根付いていることがわかります。

考証と解釈

「オシヒ」という名称に関しては、「大し霊」という解釈や「勇壮な意味」を持つと考えられる説があります。アメノオシヒは大伴氏が歴史的に果たしてきた役割、すなわち天皇や宮門の警護、地方の平定に密接に関連しており、彼の神話はそうした家系の起源を示していると考えられます。また、同様の神話の中でアメノオシヒがどのようにして他の神々と関わっていたのかも、歴史的な観点から注目されています。『古事記』の伝承と『日本書紀』の記述の間には、同格であるかどうかに異同が見られるため、こうした違いが後の歴史にどのように反映されたのかも研究の対象になっています。

アメノオシヒは、日本神話において重要な位置を占める神であり、その神話の中での役割や系列は、古代日本の社会構造や宗教観を理解するうえで貴重な資料となっています。

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