アメリカ合衆国における入学試験

アメリカの入学試験制度は、日本とは大きく異なり、多様な選考方法で志願者を評価します。幼稚園から大学院まで、各教育段階における入学試験の現状、選考基準、そして制度が抱える問題点について詳しく見ていきましょう。

幼稚園・小学校

アメリカでは、5歳未満の子どもが通う保育園（Preschool, Nursery School, Pre-K）は私立が中心で、一般的には先着順や抽選で入学者を決定します。しかし、教育水準の高い都市部では、名門私立幼稚園への入学対策を行う園や、外国語イマージョン教育、モンテッソーリ教育を導入する園などがあり、入学選考も実施されることがあります。選考では、書類審査、面接、知能検査などが用いられ、競争率が非常に高い状況です。

キンダーガーテン（Kindergarten）から始まるK-12（幼稚園から高校卒業までの教育課程）では、公立、私立、ホームスクーリングの3つの形態があります。

K-12（小中高一貫教育）

公立学校の入試

アメリカの公立学校制度は、各州の学区によって運営されています。学区内の固定資産税が学校予算となるため、地域によって教育水準に大きな格差があります。早期就学や飛び級、ギフテッド教育、優等クラス（Honors）や大学単位認定クラス（AP）などを希望する場合は、入学試験や選考試験が課されることがあります。また、外国語イマージョンや国際バカロレア資格などの特色あるプログラムを持つマグネット・スクールでも、入学審査が行われることがあります。

選考方法は内申書だけでなく、面接や筆記試験、知能検査などが用いられます。筆記試験は、州が作成する標準テストや、全米標準テスト（アイオワ基礎テストITBS、アイオワ達成度テストITED、中等教育入学テストSSAT）が一般的です。APクラスで大学単位を取得するには、年度末に全米統一試験であるAP Examに合格する必要があります。

私立学校の入試

アメリカの私立学校は、経営母体によって求める生徒像が異なります。進学校では、学力テスト（ISEE、SSATなど）を実施することが一般的です。プレップ・スクールは、名門大学への進学を目指すための準備学校であり、入学選考基準は学力だけでなく、スポーツやリーダーシップ、自己規律などが評価されます。非営利団体や宗教団体が運営する私立学校では、学校の方針への賛同が重視されます。クリスチャン・スクールやジューイッシュ・スクールが多く存在しますが、宗教色が強い学校を避ける家庭もあります。

特殊教育を必要とする生徒やギフテッドのための専門学校も存在し、それぞれのニーズに合わせた教育を提供しています。

高等教育

コミュニティ・カレッジ

高校卒業後には、コミュニティ・カレッジ（コミカレ）という2年制大学に進む道と、4年制大学に進む道があります。コミカレは、職業訓練や4年制大学への編入を目的とした公立大学で、学費が比較的安価です。入学のハードルは低いですが、一定の成績を維持するには相応の努力が必要です。外国人にも門戸が開かれており、TOEFLの基準も4年制大学より低いことが一般的です。コミカレから4年制大学への編入を目指す学生は、高いGPAを維持することが重要です。

4年制大学

4年制大学には、アイビー・リーグをはじめとする名門私立大学、リベラルアーツ・カレッジ、州立大学など、多様な選択肢があります。入学審査は、高校の成績、SAT/ACTの点数、推薦状、小論文などを総合的に評価します。大学側は学生の多様性を重視する傾向があり、一芸入試やポートフォリオ提出、面接などを実施する大学もあります。留学生や編入生も多く、入学審査書類は郵送またはオンラインで提出します。

大学院

大学院の入学審査も書類選考が中心ですが、専攻によっては面接を行うこともあります。志望動機の小論文（EssayまたはStatement of Purpose）、ポートフォリオ、推薦状などが重視されます。専門分野での研究実績や職務経験も評価の対象となります。大学院入学共通テスト（GRE）やTOEFLの点数も提出する必要があります。専門職大学院（医学、法学、経営学など）では、GMAT、LSAT、MCATなどの専門試験が課されます。

米国入試制度の問題点

レガシー制度

名門大学には、卒業生の子孫を優遇するレガシー制度が存在します。これは、大学への寄付金や人脈形成に貢献する卒業生を重視する考え方に基づいています。

人種・民族の問題

多民族国家であるアメリカでは、人種・民族による選考基準が問題となることがあります。アファーマティブ・アクションとして、マイノリティー（特にアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、ネイティブ・アメリカン）の合格を優遇する政策がありますが、白人からの逆差別という批判もあります。また、アジア系アメリカ人は学力が高いため、合格基準が厳しくなる傾向があります。

州民枠

州立大学は、州民に対して学費を低く設定し、入学を優先する州民枠を設けています。これは、州民の税金を還元するという考え方に基づいています。

アメリカの入学試験制度は、多様な選考方法で志願者を評価する一方で、公平性や地域性、人種問題など、複雑な課題も抱えています。制度の透明性を高め、より公平な選考を行うことが求められています.

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