アメリカ合衆国の福音派

アメリカ合衆国の福音派

アメリカ合衆国における福音派は、福音主義の立場を基盤とし、さまざまな教会や信者によって構成されています。これらのグループは、世界教会協議会（WCC）や自由主義神学との緊張関係があり、またキリスト教根本主義（ファンダメンタリズム）には同意しない立場を持っています。

福音派の象徴的な存在であるビリー・グラハムは、福音派の信仰の核心に立ちながらも、根本主義者との対立がみられる人物です。彼は確固たる5つの信仰のポイントを大切にしているものの、根本主義者は彼のエコーメニカルなアプローチに否定的な見解を示しています。これにより、福音派は単一の立場ではなく、多様な価値観やアプローチを内包することになりました。

1942年に設立された米国福音同盟（NAE）は、福音派の代表的な組織です。この団体には、ペンテコステ派のアッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団が加盟していますが、キリスト教根本主義を代表するAmerican Council of Christian Churchesは、聖霊派を認めないなど、内部での意見の相違も存在します。

アメリカの福音派には、多くの活発な組織があり、特にワールド・ビジョンやユース・フォー・クライスト、キャンパス・クルセードなどが代表的な活動を行っています。また、福音派系の雑誌『クリスチャニティ・トゥディ』は、リベラル派の読者にも広く受け入れられ、キリスト教関係の雑誌としての地位を確立しています。

1966年と1974年にはそれぞれ、世界伝道会議とローザンヌ世界伝道国際会議が開催され、多くの福音主義者が集まりました。この会議を通じて彼らは、「ローザンヌ誓約」を結びました。この誓約では、福音的な伝道と社会問題を別々の概念として捉え、特に伝道の重要性を強調しつつも、救いは全人的なものであると認識されています。エヴァンジェリカルたちは、WCCに属するリベラル派に対し、伝道への取り組みが社会問題に偏っていることを批判してきました。

イラク戦争に関しては、米国福音同盟とアジア福音同盟、さらに日本福音同盟（JEA）との間に異なる意見が存在します。米国福音同盟が戦争を支持する立場を取る一方で、アジア福音同盟とJEAはその行為に反対しています。これに加え、2009年には、正教会、カトリック教会、福音派の指導者たちが共同で「マンハッタン宣言」を発表し、人工妊娠中絶や同性愛に反対する姿勢を示しました。

また、2010年には世界宣教東京大会が開催され、アメリカの教会代表が日本への原爆投下と、米国が関与するさまざまな国際的な罪について謝罪する機会も設けられました。これにより、福音派が抱える道徳的、倫理的な課題がさらに明らかとなりました。

このように、アメリカ合衆国の福音派は、信仰の内容だけでなくその歴史や社会的立場においても複雑な状況に置かれています。それは伝道、社会問題、政治、倫理に至るまで多岐にわたっており、今後の動向にも注目が集まっています。

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