アメリカ合衆国の鉄道

アメリカ合衆国の鉄道

アメリカ合衆国における鉄道輸送は、旅客輸送よりも貨物輸送が圧倒的に中心となっています。2020年のデータでは、鉄道貨物輸送量はトンキロ換算で世界第二位という規模を誇ります。数多くの民間企業が鉄道事業を運営しており、その統括団体であるアメリカ鉄道協会（AAR）は、技術標準化、運行調整、研究開発など幅広い業務を行い、国際的な鉄道機関にも加盟しています。シカゴは150年以上も主要鉄道の拠点として機能し続け、全米の鉄道車両やコンテナの４分の１はシカゴを経由するか、起点・終点としています。

歴史

アメリカの鉄道の歴史は古く、1830年代には蒸気機関車の運行が始まりました。1900年前後には全盛期を迎え、馬車や川船に代わる主要な旅客輸送手段として、国内旅客輸送シェアの9割を占めたとされています。1916年には路線長が40万キロに達しましたが、その後は自動車や航空機の普及により旅客輸送は衰退しました。しかし、貨物輸送においては現在も陸上輸送の主役であり続け、国内外のコンテナ輸送を支えています。2006年時点での総路線長は22万5500キロメートルと世界最長を記録していました。

事業者の特徴

アメリカ鉄道の大きな特徴は、創業期から民間企業が主体となって運営されてきた点です。例外は第一次世界大戦中の政府管理、北東部鉄道の経営危機を契機としたコンレール、旅客輸送を担うアムトラック、都市交通事業者などごく一部に限られます。民間経営のため、激しい競争が常に存在しており、長距離ルートでの高速運転や高効率輸送を実現してきましたが、過当競争による経営危機や不当な運賃設定などの問題も引き起こしてきました。

貨物列車は数キロメートルにも及ぶ編成の長さを持つことがあり、自動空気ブレーキのみの貫通ブレーキシステムは応答性が低く、緊急停止が難しい場合があります。ディーゼル機関車は大型で、数両を連結して牽引するのが一般的です。路線の大半は非電化ですが、一部には交流電化区間も存在します。近年は鉄道会社の統合が進み、幹線鉄道を運営する一級鉄道はかつて数十社あったのが、現在は8社にまで減少しています。アムトラックは一部路線を除き、これらの8社の線路を借りて旅客列車を運行しています。

一級鉄道

アメリカの鉄道会社は、売上高に基づいて一級、二級、三級に分類されます。現在の一級鉄道は、売上高が2億5590万ドル(約255億9000万円)を超える企業です。BNSF鉄道、グランド・トランク、スー・ライン鉄道、CSXトランスポーテーション、オムニ・トラックス、カンザス・シティ・サザン鉄道、ノーフォーク・サザン鉄道、ユニオン・パシフィック鉄道などが挙げられます。これらの企業の多くは貨物輸送が中心で、長距離旅客輸送はアムトラックが担います。

公営事業者

北米の幹線貨物鉄道は民間企業が運営していますが、都市鉄道には地域自治体が関与し、都市間旅客鉄道はアムトラックが公社形態で運営しています。過去には、第一次世界大戦中の政府管理や、コンレールの設立といった事例があります。カナダやメキシコには国有鉄道が存在しましたが、近年民営化が進んでいます。アラスカ州には州営のアラスカ鉄道が存在します。

電気鉄道

アメリカの鉄道路線は非電化が中心ですが、20世紀初頭には電気鉄道が全盛期を迎えました。都市間を結ぶインターアーバンや、都市部の路面電車網が発展しました。しかし、1920年代以降の自動車普及と不況により急速に衰退し、多くの路線が廃止されました。電気鉄道の衰退については、GMや石油会社による意図的な買収と廃止説など陰謀論も存在しますが、低密度都市開発や自動車の利便性向上が背景にあると考えられています。近年では、メトロライナーやBART、アセラ・エクスプレスといった高速輸送システムの導入や、ライトレール整備など、鉄道の復権に向けた取り組みがなされています。

旅客輸送

長距離旅客輸送はアムトラックがほぼ独占しており、通勤・地域輸送は複数の事業者が存在します。アラスカ州ではアラスカ鉄道が地域輸送を担っています。高速鉄道は、アムトラックのアセラ・エクスプレスがワシントンD.C.とボストンを結び、カリフォルニア州では高速鉄道の建設が進められています。

車両メーカー

アメリカの鉄道車両メーカーは、鉄道事業と歩調を合わせ、盛衰を繰り返してきました。現在では、エレクトロ・モーティブ・ディーゼル（EMD）やGEトランスポーテーション・システム（GE）などが主要メーカーとして活躍しています。

隣接国との鉄道接続

アメリカ合衆国はカナダとメキシコと鉄道で接続していますが、アラスカ州とカナダの間には接続がありません。ロシアとはベーリング海峡を挟んで接続していません。

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