アラインメント (言語学)

アラインメントについて

アラインメント（alignment）または格配列とは、言語学における文法項の分類手法を指します。自動詞と他動詞が持つ主語や目的語をどのように文法的に扱うかは、各言語によって異なりますが、いくつかの主要なタイプが存在します。この文法的分類は、格の表示や動詞における人称の標示といった形態的な側面、および語順や接置詞などの統語的な観点からも現れます。このアラインメントは言語類型論の重要なテーマです。

S/A/Pのアラインメント

言語におけるアラインメントは、主語と目的語がどのように位置付けられるかを表すものであり、特に自動詞の主語はただ一つの中心的な項として扱われます。この項は "S"（主語）と略されます。一方、典型的な他動詞には動作主を表す名詞句（A）と、その行為の対象である被動者を示す名詞句（P）が存在します。ここで、動作主は\( A \) の略称で、被動者は \( P \) または \( O \)（目的語）と表現されます。この分類法によって、\(S/A/P\)の取り扱いは言語によって異なります。

これらの分類には、理論上考えられる5つのタイプが存在します。

1. 中立型（S=A=P）
2. 主格・対格型（S=A/P）
3. 能格・絶対格型（S=P/A）
4. 三立型（S/A/P）
5. 二重斜格型（S/A=P）

中立型

中立型では、\( S \), \( A \), \( P \) の全てが同じように扱われます。たとえば、中国の普通話（標準中国語）では、主語、動作主、被動者の格が全く示されないため、アラインメントは中立型であるとされます。統語的にはSVO（主語-動詞-目的語）の構文を持ちます。

主格・対格型

主格・対格型では、\( S \)（主語）と\( A \)（動作主）が同列に扱われ、\( P \)（被動者）は別の扱いとなります。ケチュア語にはこのタイプが見られ、\( S \) と \( A \) には標識がなく、\( P \) のみが対格の標識を持ちます。

能格・絶対格型

能格・絶対格型では、\( S \) と \( P \) が同列に扱われ、\( A \) が別扱いとなります。オーストラリアのニャングマダ語がこのタイプの典型例で、動作主は特定の形で示されるのに対して、主語と目的語は形態的に示されません。

三立型・二重斜格型

三立型は全ての名詞項が別の形で扱われるタイプですが、実用される例は非常に稀です。二重斜格型では、\( A \) と \( P \) が同じように扱われ、\( S \) だけが区別されます。主にロシャニ語でその例が見られます。

P/T/Rのアラインメント

「与える」や「貸す」といった動詞は、典型的な授与動詞として3つの項に分かれます。この場合、授与対象は \( T \) 、受取手は \( R \) とし、目的語 \( P \) とともにアラインメントを考えます。日本語では、\( P \) と \( T \) が同一の標示で示され、\( R \)は異なる標示がされるのが特徴です。

一方、ヨルバ語の格標示では、\( P \) と \( R \) が同じ扱いとなり、\( T \) のみが特異な形で扱われる二次型アラインメントが見られます。

その他のアラインメントの類型

活格型

活格型言語は、自動詞の項を他動詞のAやOとして扱う場合があります。この特徴の一つに、グルジア語のように自動詞の用法に基づいて名詞の格が変化する場合があります。

フィリピン型

フィリピン型言語は、タガログ語やセブアノ語を含み、\( S \) 、\( A \) 、\( P \) の項と格配列の対応関係が存在しません。これらの言語では、焦点の異なる構文が使用され、対格言語の「能動態」「受動態」とは異なります。

言語の多様性は、アラインメントの複雑さとその背後にある構文の意図を反映しています。各言語が持つこれらのアラインメントの違いによって、文法の理解が深まり、言語の特性をより理解する手助けとなることでしょう。

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