アリベルト・ライマン

アリベルト・ライマン

アリベルト・ライマン（Aribert Reimann, 1936年3月4日 - 2024年3月13日）は、ドイツのベルリンで生まれた、20世紀後半から21世紀にかけて活躍した作曲家であり、優れたピアニスト（特に歌曲伴奏者）としても知られています。

経歴と活動

ライマンは、若くして故郷ベルリンの芸術大学に入学し、ボリス・ブラッハーらから作曲、対位法、ピアノといった多岐にわたる音楽教育を受けました。学業を終えた後、彼はベルリン・ドイツ・オペラでコレペティトール（歌劇の練習ピアニスト）として実地経験を積みました。この経験は、彼のオペラ作曲家としてのキャリアに大きな影響を与えたと考えられます。

1960年代後半には、ピアニストとして、そして特に世界的なバリトン歌手ディートリヒ・フィッシャー＝ディースカウの信頼厚い伴奏者として、演奏家としての名声を確立しました。フィッシャー＝ディースカウとの緊密な協力関係は、後にライマンの最も重要な作品の一つを生み出すきっかけとなります。

作曲家としてのライマンは、特に文学作品をオペラ化することで高い評価を得ました。彼の代表作の一つであるオペラ『リア王』（Lear）は、シェイクスピアの同名の悲劇を基にしており、フィッシャー＝ディースカウの提案によって作曲され、初演時にはフィッシャー＝ディースカウ自身がリア王役を演じて絶賛されました。この作品は1978年に初演され、ライマンの作曲家としての地位を不動のものとしました。また、フランツ・カフカの未完の小説を基にしたオペラ『城』（Das Schloss, 1991年）も、そのユニークな音楽語法で注目を集めました。

ライマンの作品リストを見ると、オペラや歌曲といった声楽作品が非常に大きな割合を占めていることがわかります。しかし、彼は声楽作品だけでなく、室内楽曲や管弦楽曲も多数作曲しており、幅広いジャンルで才能を発揮しました。

教育者としても、ライマンは長く音楽界に貢献しました。1970年代初頭にはベルリン芸術アカデミーのメンバーに選ばれ、1983年から1998年にかけては母校であるベルリン芸術大学で、現代歌曲のクラスを教授として担当し、多くの後進を指導しました。

その功績に対し、ライマンは生涯にわたり数多くの栄誉を受けました。ドイツ連邦共和国大功労十字星章やベルリン功労勲章といった国家レベルの勲章に加え、ローベルト・シューマン音楽賞、2011年のドイツ音楽作家賞オペラ/歌曲作曲賞、同年のエルンスト・フォン・ジーメンス音楽賞など、主要な音楽賞も数多く受賞しています。

近年の作品としては、クラリネット奏者で作曲家でもあるイェルク・ヴィトマンに献呈された『クラリネットと管弦楽のためのカントゥス』があります。この作品は2006年1月13日にケルンで初演され、ライマン自身もその場に立ち会い、この曲がクロード・ドビュッシーのクラリネット作品からインスピレーションを得たものであると語りました。

アリベルト・ライマンは、2024年3月13日、88歳で故郷ベルリンにてその生涯を閉じました。

主要作品

彼の主な作品には以下のようなものがあります。

舞台作品（オペラ）

『夢の戯曲』 (Ein Traumspiel, 1965年、原作：ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ)
『メルージネ』 (Melusine, 1971年、原作：Yvan Goll)
『リア王』 (Lear, 1978年、原作：シェイクスピア)
『幽霊ソナタ』 (Die Gespenstersonate, 1984年、原作：ストリンドベリ)
『トロイアの女』 (Troades, 1986年、原作：エウリピデス)
『城』 (Das Schloss, 1992年、原作：フランツ・カフカ)
『ベルナルダ・アルバの家』 (Bernarda Albas Haus、原作：フェデリコ・ガルシーア・ロルカ)
『メデア』 (Medea, 2009年、原作：フランツ・グリルパルツァー)

管弦楽曲

管弦楽のための変奏曲 (Variations for Orchestra)
『近き遠き』 (Nahe Ferne)
クラリネットと管弦楽のためのカントゥス (Cantus für Klarinette und Orchester)
管弦楽のための7つの断章、ロベルト・シューマンを追悼して (Sieben Fragmente für Orchester in memoriam Robert Schumann, 1998年)

声楽曲（主要なサイクルなど）

パウル・ツェランの詩による連作歌曲、バリトンとピアノのための (Zyklus nach Gedichten von Paul Celan für Bariton und Klavier, 1956年)
『薄暗くされた』アルト・ソロのための (Eingedunkelt für Alt-Solo, 1992年)
パウル・ツェランの詩による5つの歌曲、カウンターテノールとピアノのための (Fünf Lieder nach Gedichten von Paul Celan für Countertenor und Klavier, 2001年)
バリトン・ソロのための『廃棄された』 (Entsorgt für Bariton-Solo)

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