アルダハン

アルダハン：歴史と文化が交錯する国境の都市

アルダハンは、トルコ北東部、グルジアとの国境地帯に位置する都市で、アルダハン県の県都です。その歴史は古く、古代から中世にかけて様々な勢力の支配を受け、交易の要衝として発展しました。近現代には、戦争や民族間の対立に翻弄され、現在の姿に至っています。

歴史

古代から中世

アルダハンは、古代にはアルメニア王国のグガルク州アルダハン郡に属していました。9世紀には、バグラティード朝の王子によって征服されました。その後、9世紀から11世紀にかけてアッバース朝と黒海地方を結ぶ交易地として栄えましたが、1021年にはビザンティン帝国の襲撃を受け、街は壊滅的な被害を受けました。13世紀にはモンゴル帝国の支配下に入り、1266年にはグルジアのサムツヘ＝サータバゴ公国によって奪還されました。1555年には同公国がオスマン帝国に併合され、アルダハン県が組織され、要塞が築かれました。

17世紀にアルダハンを訪れた旅行家エヴリヤ・チェレビは、アルダハンの要塞について、「近づきがたい断崖の頂にあり、正方形で頑強である。寒冷な気候のため、庭園や果樹園はなく、青果はアジャリアやトルトゥムの要塞から調達される」と記しています。

近現代

1828年の露土戦争直前には、アルダハンには400世帯が暮らしており、その大多数がアルメニア人でした。しかし、後にその多くがロシアに移住しました。1877年の露土戦争でロシア帝国のカルス州に属するようになると、アルメニア人が多数派を占め、グルジア人、ギリシア人、ユダヤ人、ロシア人、トルコ人、ヤズィーディーなどが混在する多民族都市となりました。農産品、ラム肉の燻製、小麦や木材の生産・輸出で繁栄を遂げ、アハルカラキ（現グルジア）、カルス（現トルコ）、オルトゥ（現トルコ）とも道路で結ばれていました。

第一次世界大戦が勃発すると、1914年12月25日にオスマン軍がアルダハンに進駐し、大量のアルメニア系、グルジア系住民が虐殺されました。翌年6月3日にロシア軍が奪還しましたが、一部の住民は故郷を捨てて逃れました。10月革命でロシア軍が撤退すると、少数のアルメニア人民兵がオスマン軍から町を防衛しましたが、1918年5月6日には地元のムスリムの支援を受けたオスマン軍がアルメニア人の要塞を制圧し、再び占領しました。

第一次大戦終結後、イギリス軍が統治し、アルメニア第一共和国に引き継がれましたが、1920年11月にはトルコ人のナショナリストによって再び占領されました。残っていたアルメニア系、グルジア系住民はそれぞれの祖国へ逃れました。1921年にはソビエト連邦とトルコの二国間で締結されたモスクワ条約で、アルダハンはトルコ領であることが明記されました。1960年の人口は7228人で、住民はクルド人とトルコ人が大部分を占めています。

今日のアルダハン

アルダハンは県都としては国内で最も小さい部類に入ります。1993年にアルダハン地区が県に昇格するまではカルス県の小さな町でした。県の設立に伴い、官公庁やサービスに投資されるようになりましたが、山あいにあるため一年のうち半分が雪に閉ざされます。カルス・カフカース大学があり、かつてのオスマン軍の要塞には現在も軍が駐留しているため、観光客は立ち入ることができません。

地域経済を支援するため、役人、学者、軍関係者が滞在していますが、ホテルも数軒しかなく、観光客はグルジアで宿泊することが多いため、主な宿泊者はトラック運転手です。アルダハンは、かたい黄色のカシャールチーズ、畜産市場、ガチョウで知られています。

気候

アルダハンは、寒冷な気候で、冬は長く厳しい寒さとなります。

祝祭日

地元の祝日

2月23日 - 自由の日
3月18日 - チャナッカレ戦勝記念日
3月21日 - 空軍兵追悼記念日
6月24日 - セルジューク朝に征服された日
10月10日 - ラム伝来日

祭日

8月20日 - 動物とその生産物の祭り
11月18日 - ガチョウ祭り

姉妹都市

アハルツィヘ（ジョージア）
* グローズヌイ（ロシア）

アルダハンは、その歴史と文化、そして自然が織りなす独特の魅力を持つ都市です。国境の地として様々な民族が交錯した歴史を持ち、今日でもその影響が見られます。厳しい自然環境の中で育まれた文化と、人々の生活を垣間見ることができるでしょう。

もう一度検索