アルマリク

アルマリク (Almalik)

アルマリクは、中央アジアのイリ川渓谷にあたる歴史的な都市であり、その起源は古代にまでさかのぼります。特に、モンゴル帝国の時代である13世紀から14世紀にかけて、イリ川を通り、天山山脈の北麓に至る交易路の重要な拠点として発展しました。この地域は、遊牧民たちの生活と深く結びついており、アルマリクは彼らにとっても重要な基地でした。

正確な位置は特定されていませんが、現代の中国西部の新疆ウイグル自治区内、サリム湖の南側、カザフスタンとの国境近くのイーニン（クルジャ）周辺に存在したと考えられています。アルマリクの前身は、唐の時代の史書に記載されている「弓月城」と推測されていることから、その歴史は古いものであることが示されています。14世紀には「阿里馬里城」や「ハルアリク（Halualekh）」などの名前で言及されています。特に「ハルアリク」という名称は、テュルク語で「リンゴのなる町」を意味しています。

13世紀初頭、アルマリクの地域ではカルルク族のリーダーであるオザルが台頭し、自身の勢力を基盤にします。彼は当初西遼（カラキタイ）に臣従していましたが、モンゴル帝国の拡大に伴い、1211年頃にはチンギス・ハーンに帰順しました。ただし、オザルは西遼から離反する際、内部の権力闘争に巻き込まれ、ナイマンのクチュルクに暗殺されてしまいます。

オザルの死後、チンギス・ハーンは彼の息子、スクナーク・テギンにアルマリクの指導者の地位を継がせました。チンギス・ハーンの長男ジョチの娘との結婚により、アルマリクの権勢はさらに強化されます。チンギスが亡くなった後、アルマリクはその次男であるチャガタイに与えられ、彼はこの地で春夏を過ごしました。以降、アルマリクはスクナーク・テギンとその子孫に統治され、14世紀初頭に成立したチャガタイ・ハン国の重要な中心都市となります。

この時期、アルマリクは東方におけるキリスト教の重要な拠点としても機能していました。14世紀中頃にはモグーリスタンの遊牧民をイスラム教に改宗させたトゥグルク・ティムールがこの地を拠点とし、彼は1362年に亡くなった際、アルマリクに埋葬されています。トゥグルク・ティムールの後裔たちはその後もモグーリスタン・ハン国として地域を支配しましたが、15世紀になるとウズベクとカザフの勢力が台頭し、彼らに圧迫を受けながら草原地帯を離れ、タリム盆地のオアシス都市へと移住し始めます。

次第に、ウズベクによる破壊の影響でアルマリクの地位は弱体化し、その後の歴史の中でイリ地方の中心街はクルジャに移動しました。現在、トゥグルク・ティムールの霊廟もクルジャに残されています。アルマリクは、時代を経て衰退しその歴史の舞台から姿を消しましたが、かつての栄光は今もなおこの土地に息づいています。

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