アレクサンドル・モギレフスキー

アレクサンドル・ヤコヴレヴィチ・モギレフスキーの生涯

アレクサンドル・ヤコヴレヴィチ・モギレフスキー（1885年1月27日 - 1953年3月7日）は、ロシア帝国（現ウクライナ）のオデッサで生まれ、卓越したヴァイオリニスト、教育者としてその生涯を音楽に捧げました。彼は、ニコライ2世の宮廷楽団の楽長を務めたことでも知られています。また、アレキサンダー・モギレフスキーとも表記されます。

若き日の音楽的才能

6歳からヴァイオリンを始めたモギレフスキーは、その才能を早くから開花させました。1898年にはモスクワに移り、モスクワ音楽院に入学。ニコライ・ソコロフスキーとヤン・フジマリーに師事し、その後同校を首席で卒業しました。1900年1月には、サンクトペテルブルク音楽院に進み、名教師レオポルト・アウアーの薫陶を受けました。

音楽家としてのキャリア

1909年、モギレフスキーは自身の名を冠したモギレフスキー弦楽四重奏団を設立し、演奏活動を開始します。彼は、作曲家アレクサンドル・スクリャービンの教え子であり、親友でもありました。1910年には、セルゲイ・クーセヴィツキーによる演奏旅行でスクリャービンと共演するなど、幅広い音楽活動を展開しました。同年、モスクワ・フィルハーモニー協会音楽演劇学校ヴァイオリン科の主席教授に就任し、後進の指導にも力を注ぎました。その後、1919年から1921年までモスクワ音楽院の教授を務め、1921年にはストラディヴァリウス弦楽四重奏団に入団し、演奏家としてのキャリアをさらに深めました。

日本での活動

1920年代後半、モギレフスキーはピアニストのナデージダ・ニコラエヴナ・ド・ボーアルネ・ロイヒテンベルクと演奏旅行で親交を深め、1929年に結婚します。この演奏旅行は、シンガポール、オランダ領東インド（現インドネシア）、日本など極東諸国を巡るものでした。1927年3月から12月まで、東京高等音楽学院（現在の国立音楽大学）で講師を務め、その後1930年に再来日し帝国音楽学校の教師となります。1932年からは、東京音楽学校（現在の東京芸術大学）で教鞭をとり、多くの優秀な音楽家を育てました。彼の弟子には、鈴木鎮一や諏訪根自子といった著名なヴァイオリニストがいます。1938年4月には、第6回日本音楽コンクールの審査員も務め、日本の音楽界に貢献しました。

結婚と家族

モギレフスキーは、ピアニストのナデージダと結婚しましたが、1938年に離婚しています。ナデージダは、フランス皇后ジョゼフィーヌの直系の子孫であり、ボアルネ家ロイヒテンベルク公爵ニコライの二女という、由緒ある家柄の出身でした。彼らの間には二人の子供がおり、長男ミカエルは1929年の演奏旅行中にインドネシアで、次男マクシミリアンは1935年に日本滞在中の軽井沢で生まれました。その後、モギレフスキーは日本人の家政婦と再婚しています。また、ピアニストのエフゲニー・モギレフスキーは、彼の弟の孫にあたります。

戦時中と晩年

第二次世界大戦中、モギレフスキーは軽井沢に疎開し、戦禍を逃れました。1953年、東京で生涯を終え、彼の遺体は小平霊園に埋葬されました。

参考文献

* 東京芸術大学百年史編集委員会 編「第5節 教職員. 2 外国人教師. (14) アレキサンダー・モギレフスキー Alexander Moguilewsky」『東京芸術大学百年史 東京音楽学校篇 第2巻』音楽之友社、2003年、1262-1266頁。ISBN 978-4-2760-0615-7。


モギレフスキーは、その卓越した音楽的才能と教育者としての情熱により、ロシアと日本の両国で音楽史にその名を刻みました。

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