アレクサンドロス・パナグリス

アレクサンドロス・パナグリス：抵抗の詩人、自由の象徴

アレクサンドロス・パナグリス（1939年7月2日 - 1976年5月1日）は、ギリシャの詩人であり、政治家でした。彼は、1967年から1974年までのギリシャ軍事独裁政権に対する抵抗運動において、中心的な役割を果たしました。特に、1968年8月13日に起こしたゲオルギオス・パパドプロス暗殺未遂事件と、その後の拘留中の拷問への抵抗は、彼の不屈の精神を象徴するものとして広く知られています。

生涯：独裁への抵抗

アテネのグリファダで軍人の息子として生まれたパナグリスは、アテネ工科大学で機械電気工学を学びました。ゲオルギオス・パパンドレウ率いる中央同盟に参加し、政治の世界へ足を踏み入れます。しかし、パパドプロスがクーデターを起こし独裁政権を樹立すると、彼は軍の地位を捨て、「ギリシャ・レジスタンス」という組織を立ち上げ、独裁政権への抵抗を開始しました。

一時キプロスに脱出するも、密かにギリシャへ帰国。1968年8月13日、パパドプロスの暗殺を試みますが、未遂に終わり逮捕されます。軍事法廷で死刑判決を受けた後、マクロニソス島の監獄に収監されますが、国際社会の反対により処刑は執行されず、ボギアティの軍刑務所へ移送されます。

ボギアティ刑務所では、激しい肉体的・精神的拷問を受けますが、彼は何度も脱走を試み、その度に逮捕、収監、拷問が繰り返されました。国際的な圧力により、パパドプロス政権が政治犯に対して行った大赦を拒否し、1973年に釈放された後、イタリアへ亡命します。

1974年にギリシャが民政に復帰すると、パナグリスは帰国。中央同盟の青年組織であるギリシャ民主青年団の議長に就任するとともに、国会議員にも当選します。彼は、独裁政権と協力してきた政治家たちの責任を追及しますが、エヴァンゲロス・アヴェロフ率いる同盟執行部と対立。最終的に中央同盟を脱党し、軍事政権の安保軍に関するファイル（E.S.A.ファイル）を暴露しようとしますが、その直前の1976年5月1日、アテネのヴリアグメニス通りで自動車事故により亡くなりました。この事故には不可解な点も多く、軍事政権が抱えていた真相の多くが闇に葬られる結果となりました。

詩人としての才能

獄中でのパナグリスは、過酷な拷問を受けながらも、自身の信念とユーモアを失いませんでした。ボギアティ刑務所では、壁や小さな紙に、時には自身の血を使って詩を書き続けました。彼の詩の多くは失われましたが、いくつかは友人を通じて密かに外部へ持ち出され、あるいは彼の記憶力によって書き起こされました。釈放後、彼はミラノで、ピエル・パオロ・パゾリーニの序文とともに、詩集「Vi scrivo da un carcere in Grecia（私はあなたにギリシャの刑務所から書く）」を出版しました。この詩集は、後にギリシャで出版された「絵画」（I Bogia）などの作品に先駆けるものとなりました。

象徴としてのパナグリス

アレクサンドロス・パナグリスの人生と作品は、多くの芸術家や研究者に影響を与えました。ミキス・テオドラキスは彼の詩に曲をつけ、オリアーナ・ファラーチは彼の生涯を基に「ある男」を著しました。彼の勇気と業績は、「暴君殺害者」のようであるとして、現代ギリシャの政治的、知的活力の源泉となりました。自由と民主主義の象徴として、彼はギリシャおよび世界中の新しい世代を鼓舞し、人権と市民的、政治的自由のために闘う人々を鼓舞し続けています。

ギリシャ国家は、彼の貢献を称え、名誉切手やテレホンカードを発行。アテネの地下鉄駅には彼の名前が付けられました。

映画

Panagulis Vive（パナグリスは生きている）（1980年）

主な著作

Vi scrivo da un carcere in Grecia（私はあなたにギリシャの刑務所から書く）（1974年）

アレクサンドロス・パナグリスは、抵抗の精神と芸術的才能を兼ね備えた人物として、今もなお多くの人々に記憶され、影響を与え続けています。

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