アレクサンドロス1世 (マケドニア王)

アレクサンドロス1世：反ペルシアの気概と古代オリンピックへの挑戦

紀元前5世紀後半にマケドニアを統治したアレクサンドロス1世（在位：紀元前498年 - 紀元前454年）は、形式的にはアケメネス朝ペルシアの支配下にあったものの、その実、筋金入りの反ペルシアの王でした。先代のアミュンタス1世の子として生まれた彼は、マケドニアを率いて数々の対立行動を起こし、その生涯は波乱に満ちていました。また、彼は古代オリンピックに初めて参加したマケドニア人としても歴史に名を刻んでいます。

ペルシアへの反抗

アレクサンドロス1世の反ペルシアの姿勢は、若い頃から顕著でした。ペルシアがマケドニアに服従を迫った際、父アミュンタス1世はこれを受け入れましたが、ペルシアの使者たちが宴席でマケドニアの女性たちに狼藉を働いたことに激怒したアレクサンドロスは、女装させた青年たちを使って使者を殺害するという大胆な行動に出ました。この事件は、彼の反ペルシアの気概を象徴するエピソードとして語り継がれています。その後、ペルシアは使者の捜索隊を送りますが、アレクサンドロスは隊長を買収し、事なきを得たとされています。

ペルシア戦争での二面性

ペルシア王クセルクセス1世のギリシア侵攻（ペルシア戦争）時、アレクサンドロスはペルシア軍に加担しましたが、その行動は複雑でした。彼はテッサリアに進軍してきたギリシア連合軍に撤退を助言したり、ボイオティア人を戦火から救おうとしたりと、親ギリシア的な行動を度々見せました。サラミスの海戦後、クセルクセスがペルシアに帰国した後も、義兄弟のマルドニオスがギリシアに残っていましたが、アレクサンドロスはマルドニオスをアテナイへ送り、ペルシアへの服属を条件とした講和を打診します。しかしアテナイ人はこれを拒否。翌年のプラタイアの戦いの直前には、アレクサンドロスはアテナイの陣営を訪れ、マルドニオスの作戦計画を伝えて忠告。これらの行動は、彼の内に秘めた反ペルシア感情を示唆しています。結果として、マルドニオスは戦いに敗れ、戦死しました。

マケドニアの領土拡大

アレクサンドロス1世は、その治世においてマケドニアの領土拡大にも尽力しました。トゥキュディデスの記録によると、彼はマケドニアの沿岸地域を征服し、王国の勢力を拡大しました。

古代オリンピックへの参加

アレクサンドロス1世の偉業の一つとして特筆すべきは、古代オリンピックに初めて参加したマケドニア人であるという事実です。当時、マケドニア人はバルバロイ（異民族）と見なされており、オリンピックへの参加は認められていませんでした。しかし、アレクサンドロスは自身の血統がアルゴス人に遡ることを証明し、オリンピア祭の役員からマケドニア人がギリシア人であることを認めさせることに成功しました。

彼は、ペルシア戦争以前の古代オリンピア競技のスタディオン走に参加し、同着で1位となりましたが、再レースで敗れたため、優勝者リストに名前が残ることはありませんでした。この一件を捏造とする説も一部には存在しますが、大多数の研究者は彼のオリンピック参加を事実としています。オリンピア祭はギリシア世界全体にとって公的な祭事であり、その記録は広く知られているため、捏造は不可能に近いと考えられています。

アレクサンドロス1世の子孫

アレクサンドロス1世には、次の王位を継いだアルケタス2世、そしてアルケタスを殺害して王位を奪ったペルディッカス2世、さらにペルディッカスに反旗を翻したピリッポス（またはメネラオスとも）という息子たちがいました。

アレクサンドロス1世は、反ペルシアの気概と古代オリンピックへの参加という二つの側面を持つ、複雑で興味深い人物でした。彼の生涯は、古代ギリシア史における重要な一章を形作っています。

参考文献

トゥキュディデス『トゥーキュディデース 歴史　世界古典文学全集11』小西晴雄訳、筑摩書房、1971年
ヘロドトス『歴史』（中・下）、松平千秋訳、岩波文庫、1972年
* ポンペイウス・トログス / ユスティヌス抄録『地中海世界史』合阪學 訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、1998年

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