アレクセイ・コスイギン

アレクセイ・コスイギンの生涯と政治

アレクセイ・ニコラエヴィチ・コスイギン（1904年2月21日 - 1980年12月18日）は、ソビエト連邦の政治家であり、ソ連共産党の要職を歴任しました。特に、ソ連首相（閣僚会議議長）として知られ、フルシチョフ失脚後のソ連において、ブレジネフやスースロフと並び、大きな影響力を持つ政治家でした。

生い立ちと初期の活動

コスイギンは、1904年2月21日にロシア帝国のサンクトペテルブルクで、労働者階級の家庭に生まれました。幼少期に母親を亡くし、父親の手で育てられました。ロシア革命に遭遇し、1919年には赤軍に志願しました。1921年に除隊後、レニングラード生活協同組合技術学校に入学、その後、シベリアのノヴォシビルスクで生活協同組合に勤務しました。経済部門で働いていた際、レーニンのスローガンである「協調 - 社会主義への道」に言及したとされています。1927年にはソビエト連邦共産党に入党しました。

1930年にレニングラードに戻り、専門学校で学び、1935年に卒業。その後、織物工場で職長や工場長として勤務する中で大粛清を経験しました。1938年から1939年までレニングラード市長を務めました。

第二次世界大戦と戦後

1939年から1940年にかけて、織物工業人民委員を務め、その後は主に経済関係の役職を歴任しました。1940年には人民委員会議副議長（副首相）に就任。大祖国戦争（独ソ戦）では、ソ連国家防衛委員会の委員として、ヨーロッパ・ロシアの企業や工場をウラル山脈以東へ疎開させることに尽力しました。1943年にはロシア共和国人民委員会議議長（首相）に昇進しました。

第二次世界大戦終結後の1946年には、党政治局員候補に選出され、同時にソ連邦副首相に就任しました。1948年には大蔵大臣、そして党政治局員に昇進しました。しかし、後見人であったアンドレイ・ジダーノフが急死すると、ジダーノフ派を排除する動きが起こり、コスイギンも標的となりました。粛清の際、「レニングラード事件」というでっち上げ事件が起こり、コスイギンは軽工業大臣に降格となりました。

フルシチョフ時代

スターリンの死後、1953年には工業製品大臣、そして閣僚会議副議長（副首相）に復帰しました。フルシチョフが権力を握ると、1956年にはゴスプラン（国家計画委員会）第一副議長に任命されました。1957年の反党グループ事件ではフルシチョフを支持しました。その後、コスイギンのキャリアは回復し、1959年にはゴスプラン議長に、1960年には閣僚会議第一副議長（第一副首相）に昇進しました。この時期、コスイギンはフルシチョフ、コズロフ、ブレジネフと並び、「ビッグ4」と呼ばれるソ連の有力政治家の一人となりました。しかし、1962年にフルシチョフに経済改革計画を批判され、指導部の中枢から外されました。

ソ連首相として

1964年10月、フルシチョフが失脚すると、後任のソ連首相に就任しました。コスイギンはブレジネフ、ポドゴルヌイと共に「トロイカ」と呼ばれる集団指導体制を築きました。コスイギンは主に経済を担当し、外交では政府の長が外交を行うべきだと考えていました。その結果、ヘンリー・キッシンジャー米大統領補佐官らは、コスイギンをソ連の最高指導者とみなすほどでした。

デタント期には、西側諸国との軍備管理交渉を主導し、平和的共存を模索しました。1967年の第三次中東戦争後には、リンドン・ジョンソン米大統領との首脳会談で米ソ関係改善に努めました。また、西ドイツのヴィリー・ブラント首相とモスクワ条約を締結し、関係を改善しました。さらに、1966年にはインド・パキスタン両国を仲介し、タシュケント宣言に署名させるなど、外交面で大きな成果を上げました。

経済面では、1965年に経済改革（コスイギン改革）を推進しましたが、1960年代末までに改革は頓挫しました。コスイギンは消費財の増産を主張しましたが、ブレジネフとの対立により、軍事と農業への予算が増額されることになりました。プラハの春以降、コスイギンの政策に対する批判が強まり、政治局内でのブレジネフの地位が確立していきました。

中ソ対立の最中には、中国の周恩来首相と会談しましたが、大きな進展は見られませんでした。1970年代中期には、ブレジネフが権力を確立し、コスイギンの影響力は低下しました。1977年の「ブレジネフ憲法」制定により、閣僚会議は最高会議に従属する機関と位置づけられ、コスイギンの権限はさらに縮小されました。また、体調不良により第一副首相のマズロフが首相職を代行する機会が増え、1978年にマズロフが退任すると、ブレジネフは自身の腹心を第一副首相に任命し、閣僚会議の実権を掌握しました。1980年には、コスイギンが本来行うはずだった経済開発計画に関する演説をチーホノフが行うなど、コスイギンの立場は非常に弱まりました。

死去

1980年10月、コスイギンは病状悪化により入院し、辞表を提出しました。翌日、すべての地位と名誉を失いました。後任の首相にはチーホノフが就任しましたが、コスイギンへの謝意が示されなかったため、異例の事態としてブレジネフがコスイギンの活動への謝意を示す声明を発表しました。コスイギンは1980年12月18日に死去し、クレムリンの壁に葬られました。

ペプシコーラの導入

デタント期には、アメリカ合衆国の消費物資導入を積極的に進め、その代表例としてペプシコーラが挙げられます。1974年には南ロシアでペプシの工場が操業を開始し、ソ連時代からロシアでは「コーラ=ペプシ」として定着しました。

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