アレッサンドロ・ファルネーゼ (パルマ公)

アレッサンドロ・ファルネーゼ

アレッサンドロ・ファルネーゼ（Alessandro Farnese, 1545年8月27日 - 1592年12月3日）は、16世紀後半に活躍したスペインの軍事指導者であり、第3代パルマ公およびピアチェンツァ公（在位：1586年 - 1592年）です。父は第2代パルマ公オッターヴィオ・ファルネーゼ、母は神聖ローマ皇帝兼スペイン王カール5世の庶子であるマルゲリータです。彼の名は、父方の曽祖父にあたるローマ教皇パウルス3世（本名アレッサンドロ・ファルネーゼ）に由来しています。

生涯

母マルゲリータがネーデルラント17州の総督に任命されたことに伴い、幼少期をブリュッセルで過ごしました。1565年には、ポルトガルのアヴィス王朝の王女であるドナ・マリアと結婚します。マリアはポルトガル王マヌエル1世の孫にあたり、敬虔で深い教養を持ち、夫アレッサンドロを心から愛したと伝えられています。この結婚により、アレッサンドロはマドリードのスペイン宮廷でも重きをなすようになりました。結婚後、彼はアルカラ大学で、従弟にあたるスペイン王太子カルロスや叔父ドン・フアン・デ・アウストリアと共に学びました。母方の血筋がスペイン・ハプスブルク家と繋がっていたことから、早くからスペイン軍に身を投じ、その類稀な軍事的手腕を遺憾なく発揮する機会を得ます。

1571年には、オスマン帝国に対するキリスト教連合軍の勝利として知られるレパントの海戦に参加し、その名を高めました。その後、1578年には母方の叔父にあたるスペイン王フェリペ2世より、激動の時代を迎えていたネーデルラントの総督に任命されます。この地では、宗教的・政治的な対立からスペイン王権に対する反乱が激化していました（八十年戦争）。

総督として赴任したアレッサンドロは、卓越した外交手腕と軍事力を駆使して情勢の安定化を図ります。1579年には、カトリックを信仰する南部10州との間でアラス同盟を締結。これにより、これらの地域をスペイン王権のもとに引き戻すことに成功しました。一方、カルヴァン派が主体の北部7州はユトレヒト同盟を結成して抵抗を続け、八十年戦争は泥沼化していきます。アレッサンドロは軍事作戦において、反乱軍の拠点に対し relentless な攻勢をかけました。1582年にアウデナールデを攻略し、1584年から1585年にかけては、戦略的に重要な都市であったアントウェルペンやブリュッセルを次々と陥落させ、北部へ勢力を拡大。ネーデルラント全域の制圧に迫る勢いを見せ、スペイン側にとって最も成功した総督として名を馳せました。

しかし、1588年にフェリペ2世がイングランド侵攻計画を優先し、ネーデルラントのスペイン軍をそのために活用する方針に転換したことが、戦況に影響を与えます。アレッサンドロはダンケルクで待機命令を受けましたが、スペインの無敵艦隊がアルマダの海戦で壊滅的な敗北を喫したため、イングランドへの攻撃計画は中止され、ネーデルラントにおける攻勢も停滞を余儀なくされました。

晩年、1589年にフランスでヴァロワ朝が断絶し、プロテスタントであるブルボン家のアンリ4世が王位継承者となったことからユグノー戦争が再燃すると、フェリペ2世の命令でカトリック同盟を支援するためスペイン軍を率いてフランスへ介入しました。しかし、1592年、ルーアン近郊でアンリ4世の軍勢と交戦中に重傷を負い、療養中のアラスでその生涯を終えました。

アレッサンドロはパルマ公でもありましたが、その治世においては、息子のラヌッチョが摂政として公国の政務を代行していました。

子女

1565年に結婚したドナ・マリアとの間には、以下の3人の子がいます。

マルゲリータ（1567年 - 1643年）：マントヴァ公ヴィンチェンツォ1世・ゴンザーガと結婚しました。
ラヌッチョ（1569年 - 1622年）：アレッサンドロの後を継ぎ、第4代パルマ公となりました。
* オドアルド（1573年 - 1626年）：聖職者となり、枢機卿に任じられました。

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