オッターヴィオ・ファルネーゼ

オッターヴィオ・ファルネーゼの生涯

オッターヴィオ・ファルネーゼ（1524年 10月9日 - 1586年 9月18日）は、第2代パルマ公およびピアチェンツァ公として、激動の16世紀を駆け抜けた人物です。初代パルマ公ピエール・ルイージ・ファルネーゼとジェローラマ・オルシーニの次男として、ヴァレンターノで生まれました。

教皇パウルス3世を祖父に持ち、枢機卿アレッサンドロ・ファルネーゼを兄に持つという、当時の有力な貴族一族の一員でした。また、姉のヴィットーリア・ファルネーゼはウルビーノ公グイドバルド2世・デッラ・ローヴェレの妻であり、弟には枢機卿ラヌッチョ・ファルネーゼ、カストロ公オラーツィオ・ファルネーゼがいました。

政略結婚と苦難の始まり

1538年、オッターヴィオは神聖ローマ皇帝カール5世の庶子マルゲリータと結婚しました。マルゲリータはフィレンツェ公アレッサンドロ・デ・メディチの未亡人であり、若いオッターヴィオを当初は嫌っていましたが、1541年にオッターヴィオがアルジェでの軍事作戦で負傷して帰国すると、その感情は愛情へと変わったと伝えられています。1545年には双子の男子が誕生しましたが、カルロは夭折し、アレッサンドロが後継者となりました。

権力闘争と領土問題

同年に祖父からカストロ公領を委ねられ、翌年には舅カール5世から金羊毛騎士団員に選ばれました。しかし、祖父がカール5世にオッターヴィオをミラノ総督に任命してくれるよう働きかけたにもかかわらず、カール5世はフェランテ1世・ゴンザーガを任命したため、皇帝とファルネーゼ家の関係は悪化します。さらに、兄のアレッサンドロは、父からの相続権がオッターヴィオに移されたことに不満を抱いていましたが、祖父の配慮で遠ざけられました。

1547年、父がピアチェンツァで暗殺されると、パルマ公国はフェランテ1世に占領され、オッターヴィオは失地回復を余儀なくされます。1550年に教皇ユリウス3世によってパルマは返還されましたが、ピアチェンツァは失われたままでした。そのため、1551年にスペインからフランスに離反し、金羊毛騎士団勲章を放棄して、代わりにフランス王アンリ2世から聖ミカエル騎士団勲章を授与されました。この行動は第六次イタリア戦争を引き起こす一因となりました。

和睦と領土回復

1556年、義弟にあたるスペイン王フェリペ2世と和睦し、ピアチェンツァも返還されました。1559年のカトー・カンブレジ条約でその支配が確認され、放棄した金羊毛騎士団勲章も取り戻しました。しかし、同時期に家族と離れ離れになり、1556年には息子がスペインへ人質として送られ、1559年には妻がネーデルラント17州の総督として赴任しました。

パルマの都市計画と芸術への関心

オッターヴィオは、その後パルマ・ピアチェンツァ公国の都市計画に尽力しました。1556年にはパルマを公国の首都に定め、通貨の改定や農業・商業改革を推進しました。1561年からは、兄が庇護していた建築家ジャコモ・バロッツィ・ダ・ヴィニョーラの設計によりパルマ公宮殿の建設を始め、1570年頃には街の一角に宮廷を設置し、1580年頃にはパルマ公宮殿に回廊を追加しました。また、ピアチェンツァにもパラッツォ・ファルネーゼを建設しようとしましたが、資金不足などの理由から中断されました。

オッターヴィオは、ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1546年に描いた『教皇パウルス3世とその孫たち』のモデルの一人としても知られています。1566年からはパルマの庭園宮殿内の室内装飾に取り掛かり、ジローラモ・ミロラ・ヤーコポ・ザングイーディ（通称ベルトーヤ）らが叙事詩『恋するオルランド』『狂えるオルランド』などを題材にした作品を描き、1573年には「アリオストの間」「接吻の間」と呼ばれる部屋が完成しました。

死と後継

1586年、オッターヴィオは61歳で死去しました。パルマ公位は息子のアレッサンドロが継承しましたが、スペインの軍人としてネーデルラントで八十年戦争を戦っていたため、孫のラヌッチョが代わりにパルマを統治しました。

子女

マルゲリータとの間に双子の男子を儲けましたが、1人は夭折しました。

カルロ（1545年）
アレッサンドロ（1545年 - 1592年）

また、6人の庶子を儲けました。

チェーザレ（1550年 - 1627年）
ヴィオランテ（1555年 - ?）
ラヴィニア（1560年 - 1605年）
ジュリオ・オスティリオ（1562年 - ?）
エルシリア（1565年 - 1596年）
イザベラ（1570年 - 1638年）

参考文献

インドロ・モンタネッリ・ロベルト・ジェルヴァーゾ著、藤沢道郎訳『ルネサンスの歴史下反宗教改革のイタリア』中央公論社、1982年。
ジャコモ・バロッツィ・ダ・ヴィニョーラ著、長尾重武編『建築の五つのオーダー』中央公論美術出版、1984年。
ロベルト・ザッペリ著、吉川登訳『ティツィアーノ＜パウルス3世とその孫たち＞閥族主義と国家肖像画』三元社、1996年。
高梨光正監修・編『パルマイタリア美術、もう一つの都』読売新聞東京本社、2007年。