アローマンシュ (空母)

アローマンシュ (R95)：フランス海軍の小さな巨人

アローマンシュ(Porte Avions Arromanches, R95)は、フランス海軍に所属した航空母艦です。同型艦を持たない本艦は、元々はイギリス海軍のコロッサス級航空母艦、コロッサス(HMS Colossus, R15)として1944年に竣工しました。第二次世界大戦後、軽空母の価値が低下する中で、1946年から5年間の期限付きでフランスに貸与され、ノルマンディー上陸作戦の地名に因んで「アローマンシュ」と改名されました。小型ながらも高い運用性を誇る本艦は、1951年にフランスが正式に購入し、1974年まで活躍しました。特に、第二次世界大戦後の軍艦同士の戦闘において、航空母艦として敵艦を撃破した最初の事例を残したことで知られています。

艦型と設計

アローマンシュは、第二次世界大戦期に設計されたイギリス空母の特徴を色濃く受け継いでいました。イラストリアス級の後継艦として、エンクローズド・バウ(艦首が船体と一体化している構造)と大型のアイランド(艦橋構造物)、オーバーハングした艦尾形状が特徴的です。全長を抑えた船体に幅広の飛行甲板を持つ同時代のイギリス空母とは異なり、コロッサス級は全長を伸ばした細長い船体を採用。設計はロイド船級協会の規格に準拠しており、耐用年数を短縮することで早期建造を優先した設計思想が見て取れます。

航空艤装面では、アメリカ製艦載機の搭載を前提として設計された点が注目されます。イギリス海軍が艦載機の半数をアメリカから輸入していた事実は、格納庫やエレベーターの設計にも影響を与え、格納庫の高さは既存艦よりも高く設計されました。

船体構造は重厚で、水面から乾舷までの高さが低く設計されています。艦首からせり上がるエンクローズド・バウ、前後に配置された2基のエレベーター、飛行甲板右舷に一体化された艦橋と煙突、そして三脚型の主マストといった特徴的なシルエットを持っていました。当初は4cmポンポン砲やエリコン2cm機関砲を備えていましたが、1958年の改装時に対空火器は全て撤去されました。

1958年の改装では、[アングルド・デッキ]が採用され、艦首甲板が発艦スペースとして使用されるようになりました。この改装により全幅は約39mに拡大し、エレベーターやカタパルトはフランス海軍のブレゲー・アリゼ運用に対応して強化されました。また、レーダーやマストも更新されました。

搭載機

アローマンシュは、就役期間を通して様々な艦載機を搭載しました。初期にはF4Uコルセアやバラクーダといった艦上戦闘機や艦上爆撃機を搭載し、その後もシーファイア、SBDドーントレス、F6Fヘルキャット、SB2Cヘルダイバー、TBMアベンジャーなど、アメリカ製の艦載機を中心に運用しました。1962年には、シコルスキーS-58ヘリコプターを搭載し、対潜哨戒能力の強化も図られました。

機関

アローマンシュの機関は、当時のイギリス海軍艦艇で広く採用されていたアドミラリティ式重油専焼三胴缶4基とパーソンズ式ギヤードタービン2基で構成され、最大出力は42,000馬力、速力は25.5ノットでした。速力は艦隊における空母の運用実績に基づき決定されており、機関室は横隔壁で3つに区切られ、被害時の生存性向上を考慮した設計となっていました。これはフランス海軍やアメリカ海軍で広く採用されていた手法です。

艦歴

アローマンシュは1946年8月にカサブランカに到着し、フランス海軍に就役しました。第一次インドシナ戦争、第二次中東戦争などに参加し、第二次中東戦争では僚艦ラファイエットと共にエジプト海軍の駆逐艦2隻を撃破するという戦果を挙げました。1950年代後半に改修を受け、アングルド・デッキ化、レーダー更新などの近代化改修を実施。その後は、クレマンソー級空母の就役により第一線を退き、練習空母として運用されました。1968年から1969年には対潜ヘリコプター搭載艦に改修され、1974年に除籍、1978年に解体されました。

参考文献

「BRITISH AND EMPIRE WARSHIPS OF THE SECOND WORLD WAR」（Naval Institute Press）
「世界の艦船増刊第71集　イギリス航空母艦史」（海人社）
* 「世界の艦船増刊第80集　航空母艦全史」（海人社）

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