アンスティチュ・フランセ東京

アンスティチュ・フランセ東京

アンスティチュ・フランセ東京は、東京都新宿区に位置するフランス政府公式のフランス語学校および文化センターです。以前は東京日仏学院として知られていましたが、2012年に現在の名称に変更されました。この施設は、建築家・坂倉準三が手掛けたモダニズム建築の代表例として高く評価されています。

歴史

1949年、財団法人日仏会館が東京都に語学学校の設立を申請し、翌年に認可されました。1950年12月には、市谷の相馬男爵邸跡地で建設工事が開始されました。設計を担当したのは、ル・コルビュジエのもとで建築を学んだ坂倉準三です。当初は1951年5月の完成を目指していましたが、朝鮮特需による資材の高騰のため、ホールの建設を中止するなど設計を見直した結果、1951年9月に竣工しました。1952年1月16日には、東京日仏学院が開校し、開校式には吉田茂内閣総理大臣、高松宮宣仁親王、モーリス・ドジャン駐日フランス大使らが出席しました。

開校当初は200人程度だった生徒数は、1960年には2839人に増加し、施設が手狭になったため、1960年から1961年にかけて増築工事が行われました。その後も、1994年から2001年、2004年にかけて改築・改装が行われ、2019年10月からは既存棟の改修と新棟建設が進められています。

2012年9月、東京日仏学院は横浜日仏学院、関西日仏学館、九州日仏学館、および駐日フランス大使館文化部と統合し、アンスティチュ・フランセ日本となりました。これに伴い、本校はアンスティチュ・フランセ東京と改称されました。

建築

アンスティチュ・フランセ東京は、飯田橋駅から外堀通りを市ケ谷駅方面に進み、市ヶ谷台に至る逢坂の登り口に位置しています。敷地内には築土神社の摂社があり、その右側が施設への入口です。館内には、図書・音楽映像資料を所蔵するメディアテーク、映画館、フランス語書籍を扱う書店「欧明社リヴ・ゴーシュ店」、レストランがあり、学生以外も利用可能です。

1950年、第二次世界大戦後の建築資材統制が解除され、鉄筋コンクリートや鉄骨を用いた本格的な近代建築が再開されました。しかし、朝鮮特需による資材難と予算の制約から、当初は最小限の規模で建設されました。本館の1・2階には教室4室、図書室、集会室、教員室、院長室が設けられ、3階には院長の住居が配置されました。附属棟には玄関ホールと事務室、トイレなどが配置され、両棟を繋ぐ階段室棟で構成されています。サッシは、3階部分がスチール製、1・2階が木製でした。

外観の特徴は、薄いスラブと、バルコニーを支える濃青色の「シャンピニオンの柱」です。中庭側の階段室棟には、曲線を描く三角形の二重螺旋階段があります。この階段は、生徒用と院長用の「裏階段」として使い分けられたと考えられています。この独特な構造は、ここアンスティチュ・フランセ東京とシャンボール城だけで見ることができます。

1960年から1961年の増築工事では、坂倉自身が設計を担当し、床面積を2倍に拡大するとともに、当初は見送られていた多目的ホールが設けられました。

1994年から2001年にかけては、横浜の建築事務所「みかんぐみ」のマニュエル・タルディッツによって、耐震補強、メディアテークの設置（従来の図書室を音楽・映像資料も備えたものに）、多目的ホールを映画専用ホールにするなどの改修工事が行われました。これを機に、フランス映画の監督や俳優が講演に訪れるようになりました。2004年には、スイス出身のデザイナー、クラウディオ・コルッチがエントランスホールやカフェを大胆な色彩で改装しました。2019年からは、藤本壮介が設計を担当し、中庭を囲むように14の教室と既存棟から移設されたレストランで構成される新棟建設と、既存棟の改築が進められています。

建築に対する評価

坂倉準三は同時期に神奈川県鎌倉市に神奈川県立近代美術館も設計しており、これらの建築物は、雑誌『建築文化』の1951年11月号と12月号で連続して表紙を飾りました。また、1951年11月に開催された第1回サンパウロ・ビエンナーレでは、この両建築が展示壁面を占めて展示されました。しかし、東京大学教授の岸田日出刀は、『建築文化』1952年1月号で、これらの建築物を「浅薄で騒々しく、胸悪くなる新しがり」「アプレゲール建築」と酷評しました。その後、アンスティチュ・フランセ東京は坂倉の仕事の中でも顧みられることが少なくなりましたが、1961年の増築の際にも坂倉が設計を任され、2016年にはDOCOMOMO Japanによって日本におけるモダン・ムーブメントの建築の一つに選定されています。

脚注

注釈

出典

参考文献

松隈洋『モダニズム建築紀行 日本の戦前期・戦後1940～50年代の建築』六耀社、2016年10月28日、84-88頁。ISBN 978-4-89737-869-5。
小林裕子 (2017年4月16日). “坂倉準三による名建築“旧東京日仏学院”。創立65周年を迎えた「アンスティチュ・フランセ東京」”. LIFULL HOME'S PRESS. 2021年1月6日閲覧。

関連項目

神奈川県立近代美術館 - アンスティチュ・フランセ東京と同時期に坂倉準三が設計した建築物。
名建築で昼食を - テレビ大阪制作の2020年のテレビドラマ。第1話でアンスティチュ・フランセ東京が取り上げられた。

外部リンク

* 公式ウェブサイト （日本語）（フランス語）

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