アンソニー・ウッドヴィル (第2代リヴァーズ伯爵)

第2代リヴァーズ伯爵アンソニー・ウッドヴィル：薔薇戦争の嵐の中を生き抜いた貴族の生涯

アンソニー・ウッドヴィルは、15世紀イングランドを揺るがした薔薇戦争において重要な役割を果たした貴族です。1440年頃生まれ、リチャード・ウッドヴィルとジャック・ド・リュクサンブールの長男として誕生しました。彼の姉はイングランド王エドワード4世の王妃エリザベス・ウッドヴィルであり、甥にはエドワード5世が当たります。

初期の経歴とヨーク朝への転向

初期の薔薇戦争では、父と共にランカスター派に属していました。タウトンの戦いにも参戦した記録が残っています。しかし、その後は勢力を伸ばしつつあったヨーク朝へと転向し、エドワード4世に忠誠を誓いました。その功績により、1462年にはスケールズ男爵に叙爵され、1464年には姉エリザベスの王妃就任に伴い、王の義弟となりました。

その後、ウッドヴィル家はエドワード4世からの厚い信頼を得ます。アンソニーは1467年にはエドワード4世の妹マーガレット・オブ・ヨークとブルゴーニュ公シャルルの結婚を取り仕切り、両国の友好関係強化に貢献しました。さらに、1468年にはポーツマス港長官、1469年にはカレー副総督といった要職に就き、権勢を築いていきます。

ウォリック伯の反乱と亡命

しかし、ウッドヴィル家の台頭を快く思わない勢力も存在しました。ウォリック伯リチャード・ネヴィルはウッドヴィル家への反感を募らせ、反乱を起こします。この反乱によってエドワード4世は幽閉され、アンソニーの父と弟は処刑されてしまいます。

父の後を継ぎ、リヴァーズ伯爵となったアンソニーは、一度はエドワード4世と和睦したウォリック伯がランカスター派と手を組み再び反乱を起こすと、エドワード4世、グロスター公リチャード（後のリチャード3世）、ヘイスティングス男爵ウィリアム・ヘイスティングスらと共にブルゴーニュへと亡命を余儀なくされます。1471年、エドワード4世のイングランド帰還に同行し、バーネットの戦いでランカスター派を打ち破る勝利に貢献しました。その後はロンドン防衛に尽力し、ランカスター派の攻撃を撃退しました。

栄光と没落、そして処刑

1473年には、エドワード王太子（後のエドワード5世）の養育係であるチーフバトラーに任じられ、絶頂期を迎えます。しかし、カレー副総督を巡るヘイスティングス男爵との関係悪化、そしてウッドヴィル家とヘイスティングス派の対立は深まりました。

1483年、エドワード4世の急死により、アンソニーはエドワード5世を擁立し、戴冠式を行うべくロンドンへ向かいました。しかし、途中でグロスター公と会見したのち、反逆罪で逮捕され、ドーセット侯トマス・グレイらと共に投獄されます。抵抗や権力闘争の末、6月25日、グロスター公の命令によりポンテフラクトで処刑されました。同日、エドワード5世は廃位され、ウッドヴィル家は政界から姿を消します。グロスター公はリチャード3世として即位しました。

文化人としての側面

アンソニーは優れた文化人としての側面も持ち合わせていました。フランス語から翻訳した『哲学者名言集』は、彼の庇護を受けていた印刷業者ウィリアム・キャクストンによって出版されています。歴史家ドミニク・マンチーニは彼を「親切、真面目、公正な人物」と評していますが、史実を踏まえると、ヘイスティングス男爵との対立やリチャード3世との関係も考慮する必要があります。

家族

アンソニーはスケールズ男爵の娘エリザベスと結婚しましたが、子供は生まれず、その後メアリーと再婚しましたが、やはり子供は生まれなかったため、爵位は弟のリチャードが継承しました。

アンソニー・ウッドヴィルの生涯は、薔薇戦争という激動の時代を生き抜いた一貴族のドラマであり、栄光と悲劇、そして複雑な人間関係が織りなす物語です。

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