アンティオコスとストラトニケ (ダヴィッド)

アンティオコスの病気の原因を発見したエラシストラトス

概要

『アンティオコスの病気の原因を発見したエラシストラトス』は、フランスの新古典主義の画家ジャック＝ルイ・ダヴィッドが1774年に制作した歴史画です。この作品は、セレウコス朝のシリア王アンティオコス1世の病を治療した医師エラシストラトスのエピソードを描いています。作品は油彩で仕上げられており、ダヴィッドの初期の作品として、ローマ大賞に応募し栄誉を受けました。現在、この絵画はパリの国立高等美術学校に所蔵されています。

主題

この作品の主なテーマは、古代著述家プルタルコスによる『対比列伝』の「デメトリオス伝」に記されている物語です。物語は、マケドニアの王デメトリアス1世が娘のストラトニケをセレウコス1世に嫁がせるという経緯から始まります。ストラトニケは、先妻アパメーを失ったセレウコス1世の元に嫁ぎましたが、長男アンティオコスは父の後妻に恋心を抱き、その恋の苦しみから病気を装い、絶望のあまり自ら命を絶とうとしました。アンティオコスの主治医エラシストラトスは、彼の病の真実を見抜き、最終的にその原因を王に告げることになります。これによりセレウコス1世は驚きを持って息子とストラトニケの結婚を決定します。

作品の描写

ダヴィッドは、この物語の緊迫感を巧みに捉えています。画面左では、衰弱したアンティオコスが寝台に横たわり、彼の目からは絶望的な感情が読み取れます。右側には直立するストラトニケ、その隣には心配そうに息子を見守る父セレウコス1世が描かれています。エラシストラトスは、アンティオコスの状態を観察し、彼にストラトニケの訪問の知らせを伝えるために傍に控えています。

この作品は、前作『セネカの死』からの進化が見られ、人物の数が減り、より洗練された構図へと変化しています。各キャラクターの配置や周囲の装飾は細心の注意を払い、全体として優雅さと静けさが感じられます。絵画全体に漂う高貴な雰囲気は、ダヴィッド独自の色彩法を反映しており、白、青、赤、金色などが美しく調和しています。

来歴

この絵画は、劇作家ミシェル＝ジャン・セデーヌが所有していましたが、1860年にその遺族によってボナパルト家に販売されました。その後、パリ国立高等美術学校に移され、現在も多くの人々に鑑賞されています。

結論

ダヴィッドの『アンティオコスの病気の原因を発見したエラシストラトス』は、古代の物語を現代の視点で視覚的に再構築した名作です。作品を通じて、愛、絶望、そして勇気といった人間の複雑な感情が伝わってきます。

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