イェケ・クトクト

イェケ・クトクトは、13世紀初頭にチンギス・カンに仕えたトトカリウト・タタル部族出身の千人隊長の一人です。ペルシア語史料『集史』には「Yeke Qutqt」と記されています。

出自と概要

『集史』「チンギス・カン紀」の「千人隊長一覧」によると、イェケ・クトクトはチンギス・カンの后妃であるイェスイとイェスゲンの兄弟であったとされています。しかし、彼の事績に関する記録は少なく、『元朝秘史』などの史料には名前すら見られません。同じく千人隊長であったシギ・クトクとは、名前が類似していますが別人です。

ジョチ家との関係

イェケ・クトクトの弟であるジョチは、フレグ・ウルスに所属し、その記録が『集史』に残っています。ジョチはチンギス・カンの末弟テムゲ・オッチギンの娘ジジャカンを娶り、キュレゲン（駙馬/婿）を称しました。フレグの西征に随行してイラン方面に移住し、フレグ・ウルスに仕えるタタル部族出身者の祖先となりました。

千人隊の継承

イェスイ、イェスゲン両妃に養育されたクリ、カラ＝マングトの兄弟の子孫アラドは、ガザン・ハンに「昔の千人隊」の再編成を請願したと記録されています。この「昔の千人隊」は、イェケ・クトクトによって創始され、ジョチとともにイランに移住した千人隊であると考えられています。

ジョチ家とフレグ家の姻戚関係

ジョチにはジェルメという息子とノクタンという娘がいました。ジェルメはフレグの長女ブルガン・アカを娶り、ノクタンはフレグの長男アバカに嫁ぐなど、ジョチ家はフレグ家と密接な姻戚関係を結びました。特にアバカとノクタンの間に生まれたゲイハトゥは、後にフレグ・ウルス第5代君主となっています。

このように、イェケ・クトクトに直接関わる記録は少ないものの、彼の一族はフレグ・ウルスにおいて重要な地位を占め、その影響力はフレグ王家との姻戚関係を通じて、政治的にも大きなものとなっていきました。

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