イカル

イカル（鵤、桑鳲）

イカル（学名：Eophona personata）は、スズメ目アトリ科に分類される鳥類です。その特徴的な外見と生態から、古くから人々に親しまれてきました。

名称の由来

イカルは、その独特な行動や食性から様々な名前で呼ばれてきました。例えば、木の実を嘴で回したり転がしたりする様子から「マメマワシ」や「マメコロガシ」、木の実を好んで食べることから「まめうまし」、「豆割り」などと呼ばれていました。

「イカル」という名前の由来は定かではありませんが、奈良県の斑鳩（いかるが）に由来するという説や、鳴き声が「イカルコキー」と聞こえることに由来するという説があります。また、古くは「イカルガ（鵤、斑鳩）」とも呼ばれていました。

「鵤」の字は、「角のように丈夫な嘴」を持つことに由来するとされます。一方、「斑鳩」の字を当てることは厳密には誤用であり、首に模様があるジュズカケバトを指していたという説もあります。

清少納言の『枕草子』（第四十一段「鳥は」）には、好ましい鳥の一つとして「頭赤き雀、いかるがの雄鳥、たくみ鳥」と記されています。

学名のEophonaはギリシア語で「暁の声」、personataはラテン語で「仮面をかぶった」という意味を持ちます。

分布

イカルは、ロシア東部の沿海州方面と日本で繁殖します。繁殖地が北方に位置する個体は、冬季になると中国南部に渡り越冬します。

日本では、北海道、本州、四国、九州の山林で繁殖します。北日本の個体は、冬季になると本州以南の暖地へ移動します。

形態

イカルの全長は約23cmです。太くて大きい黄色い嘴が特徴的です。額から頭頂、顔前部、風切羽の一部は光沢のある濃い紺色で、体の上面と腹は灰褐色、下腹から下尾筒は白色をしています。大雨覆と尾羽には紺色の金属光沢があり、初列風切羽には白斑があります。雌雄同色です。

生態

イカルは主に樹上で生活しますが、非繁殖期には地上で採食している姿もよく見かけられます。木の実や草の種子を主な食料としていますが、昆虫類も食べることがあります。冬季にはジュズダマの実や刈田に残った籾を食べることもあります。ムクノキの実や木の芽などの柔らかいものを好んで食べる一方、硬い木の実も食べます。

繁殖期はつがいで生活しますが、巣の周囲の狭い範囲しか縄張りとせず、数つがいが隣接してコロニー状に営巣することが多いです。木の枝の上に、枯れ枝や草の蔓を組み合わせて椀状の巣を作ります。産卵期は5月から7月で、3-4個の卵を産みます。抱卵期間は約14日間で、雛は孵化してから14日程で巣立ちます。

非繁殖期には、数羽から数十羽の群れを形成して生活します。

飛翔は波状で、上下に揺れるように飛びます。群れで飛ぶ場合は、群れ全体も波状に動きます。

聞きなし

イカルの鳴き声は、様々な言葉に聞きなされてきました。各地に様々な聞きなしが伝わっています。

比志利古木利（ひしりこきり）
月日星（つきひほし）

「月・日・星」と囀ることから、サンコウチョウ（三光鳥）とも呼ばれています。また、「蓑笠着い」と聞きなす地方もあります。これは、繁殖期が梅雨に当たるため、イカルの鳴き声を聞いたら雨具である蓑と笠を用意した方がよいとするものです。

一般的には、「お菊二十四」「オキクニジュウシ」という聞きなしがよく知られています。

参考文献

高野伸二他 『山溪カラーガイド　日本の野鳥』、山と溪谷社
柴田佳秀 著、樋口広芳 編『街・野山・水辺で見かける野鳥図鑑』日本文芸社、2019年5月
上田恵介監修 『鳥類図鑑』 東京書籍、2006年
叶内拓哉、阿部直哉、上田秀雄『山渓ハンディ図鑑７ 新版 日本の野鳥』山と溪谷社、2014年

関連項目

日本の野鳥一覧
キヨスク - キヨスクのキャラクターである「キヨッピー」はイカルをデザインしたもの
* エフエムあやべ - イカルより「エフエムいかる」というニックネームがある

もう一度検索