イギリス気象庁

イギリス気象庁（Met Office）の詳細解説

イギリス気象庁（Met Office）は、イギリスの国立気象機関であり、ビジネス・エネルギー・産業戦略省の執行機関として、気象予測サービスを提供しています。1854年の設立以来、天気予報から気候変動まで、あらゆる時間スケールでの気象予測に取り組んでいます。

歴史

イギリス気象庁の歴史は、1854年にロバート・フィッツロイ海軍中将によって設立された、商務院内の小さな部門に遡ります。当初は船乗り向けのサービスとして、沿岸の観測所ネットワークを通じて暴風警報を提供していました。1859年に発生した客船の難破事故を契機に、暴風警報サービスの必要性が高まり、電信技術を活用して迅速な情報伝達を実現しました。

1861年には新聞への天気予報提供を開始し、気象観測の重要性が認識されるようになりました。フィッツロイの死後、一時的に予報発表が途絶えましたが、1879年に再開されました。この初期の取り組みが、現在の気象庁の基礎となっています。

国防省との関係

第一次世界大戦後、1919年にイギリス気象庁は空軍省の一部となり、航空分野における気象情報の重要性が増しました。空軍基地内に多数の観測拠点が設置され、現代でも天気予報で空軍飛行場に言及されることが多いのはこのためです。1936年には一部業務が海軍に分割されましたが、1990年に国防省の執行機関となり、商業活動も求められるようになりました。

2011年以降、ビジネス・イノベーション・技能省、そしてビジネス・エネルギー・産業戦略省へと組織が再編されましたが、現在でも軍との強いつながりを維持しています。紛争時には前線部隊に随行する気象部隊MMU（Mobile Met Unit）を派遣し、軍隊の作戦を支援しています。

所在地

2003年、本部をデヴォン州エクセターに移転し、最新の気象庁舎を建設しました。アバディーンに予報センター、ジブラルタルとフォークランド諸島に事務所を置き、世界的な活動を展開しています。また、メソスケール気象学や水文気象学の研究センターを大学内に設置し、最先端の研究にも取り組んでいます。ハドレー気候予測研究センターも本部内にあります。

予報

イギリス気象庁は、気象予測モデルを駆使して、精度の高い予報を提供しています。特に、BBCやITVなどの大手メディアにデータを提供し、一般市民への情報伝達に貢献しています。BBCウェザーセンターの予報士は気象庁の職員であり、常に最新の情報に基づいた予報を提供しています。

2015年にはBBCがMeteoGroupと契約しましたが、イギリス気象庁は引き続き海事沿岸警備庁向けのShipping Forecastや、National Severe Weather Warning（荒天警報）の発表を担当しています。

航空路火山灰情報センター

ロンドン航空路火山灰情報センター（London VAAC）は、航空機の安全を脅かす火山灰雲の予報を提供しています。国際民間航空機関（ICAO）の協力の下、世界各地に設置されたVAACの一つとして、ブリテン諸島、北東大西洋、アイスランドを監視しています。衛星画像や地震観測データを利用し、NAME拡散モデルを用いて火山灰雲の移流拡散を予測しています。

大気質

イギリス気象庁は、大気質予報にも取り組んでいます。NAMEモデルを用いて、様々な汚染物質の拡散を予測し、健康への影響に関する情報を提供しています。NAMEは、チェルノブイリ原子力発電所事故をきっかけに開発されたもので、多目的拡散モデルとして利用されています。エアロゾルの拡散はUKCAモデルを用いて計算されます。

IPCC

2001年まで、イギリス気象庁は気候変動に関する政府間パネル（IPCC）の気候科学に関するワーキンググループを主催していました。この活動は、気候変動問題に対する科学的な貢献において重要な役割を果たしました。

高性能コンピュータ

数値予報業務に必要な計算処理のため、イギリス気象庁は世界でも有数のスーパーコンピュータを所有しています。これらのコンピュータは、気象予測モデルの運用に不可欠であり、高精度な予報を可能にしています。

測候所

観測所の機械化・自動化が進んでおり、ほとんどが無人化されています。有人観測は、昼間や機器故障時に限定されています。現在では、監視カメラや気象計による観測が一般的です。

気象研究ユニットとFAAM

イギリス気象庁は、気象研究ユニットと航空機を使った観測を行うFAAM（Facility for Airborne Atmospheric Measurements）を保有し、気象研究を推進しています。これにより、より詳細な観測データを得て、予測精度向上に貢献しています。

歴代長官

イギリス気象庁は、多くの優れたリーダーによって率いられてきました。初代長官のSir William Napier Shawから、現在のRob Varleyまで、そのリーダーシップが気象庁の発展を支えてきました。

関連項目

ヨーロッパ中期予報センター

外部リンク

Met Office Official website（英語）
BBC Weather Centre（英語）
BBC Shipping Forecast page（英語）
Met Office (National Meteorological) Archive（英語）
Joint Centre for Mesoscale Meteorology at the University of Reading（英語）
Joint Centre for Hydro-Meteorological Research（英語）
Met Office news blog（英語）
イギリス気象庁 - YouTubeチャンネル（英語）

イギリス気象庁は、過去から現在に至るまで、イギリスおよび世界全体の気象観測、予報に貢献してきました。その活動は多岐にわたり、これからもより良い気象情報を提供していくでしょう。

もう一度検索