イギリス鉄道800形

概要

800形は、イギリスの都市間高速鉄道計画（IEP）の一環として導入された高速列車です。老朽化したインターシティー125の代替として、2015年に運用を開始しました。この車両の最大の特徴は、電化区間では架線から集電し、非電化区間では床下のディーゼル発電機で発電した電力を使用するデュアルモード方式を採用している点です。これにより、電化されていない区間でもスムーズな走行が可能となりました。ディーゼル発電機は、静粛性と小型化を追求し、車内の快適性を損なわないように設計されています。

車両は、日立製作所の笠戸事業所で先行製作車が製造され、その後、イギリスのダラム州にあるニュートン・エイクリフ工場でも製造が進められました。122編成が発注され、そのうち12編成が笠戸事業所で、残りの110編成がイギリス国内で製造される計画です。

当初、「ヴァージン・あずま」という愛称でヴァージン・トレインズ・イースト・コースト社に導入される予定でしたが、同社の運行終了に伴い、ロンドン・ノース・イースタン・レールウェイに引き継がれました。しかし、「あずま」の愛称は今も受け継がれています。

営業運転は、2017年10月16日にグレート・ウェスタン本線で開始されました。その後、イースト・コースト本線でも運行を開始する予定でしたが、試運転中に保安装置への干渉が発覚し、遅れて2019年5月15日に営業運転が開始されました。

仕様

800形は、イギリスでの製造を重視し、部品は可能な限りイギリス製やヨーロッパ製のものが採用されています。編成は、9両編成（5M4T）と5両編成（3M2T）の2種類が存在します。車体は日立のA-trainシステムを用いたアルミニウム製で、ダブルスキン構造を採用しています。車体長は25m（先頭車は25.35m）で、201km/hでの走行に対応した気密構造となっています。9両編成では2.5両分、5両編成では1.5両分がファーストクラスとなり、残りはスタンダードクラスです。車内には調理室、車椅子対応多機能トイレ、自転車収納スペースなども設けられています。客用ドアは両側に2箇所ずつ設置されており、プラグドアではなく引き戸が採用されています。座席は、集団見合い型の固定式クロスシートです。空調は、冷暖房兼用のエアコン方式が採用されています。

両先頭車は、パンタグラフや変圧器などの特高圧機器を搭載した制御車で、ヨーロッパ規格と英国鉄道規格に適合した衝撃吸収構造を備えています。また、先頭部には自動連結器が設置されており、分割・併合に対応しています。中間電動車には、MTUフリードリヒスハーフェン製のディーゼルエンジンをベースとしたパワーパックが搭載されています。電化区間では架線から、非電化区間では自車のパワーパックで発電した電力をVVVFインバータ装置で制御し、三相誘導電動機を駆動します。

台車はボルスタレス式空気バネ台車で、軸箱支持方式は軸梁式です。9両編成の中間付随車には、軽量化のためにインナーフレームタイプの台車が採用されており、3種類の台車が使用されています。ブレーキシステムは、電化区間では回生ブレーキ、非電化区間では発電ブレーキを常用し、空気ブレーキとしてディスクブレーキが採用されています。

運転台は左手操作式のワンハンドルマスコンを採用しており、車上情報システム（TCMS）には、イーサネットを基幹とした「E-ATI」が搭載されています。これにより、リアルタイムのデータ通信やGPSによる位置情報に基づいた制御が可能となっています。動力の切り替えもGPSベースで行われています。車上保安システムは、日立が開発したETCS (Level2) を使用しており、2014年に規格に準拠していることが証明されています。

非電化区間用の発電ユニットは、ディーゼルエンジン、発電機、ラジエーター、尿素SCRシステムが一体化されており、電動車の床下に設置できるように省スペース化されています。エンジンは、21.0LのV型12気筒で、出力560kWです。主変換装置を介して主電動機と補助電源装置に電力を供給します。

運用

2017年6月13日には、エリザベス2世女王がGWR所属の第3編成に乗車し、これを記念して同編成に女王の名が愛称としてつけられました。その後、10月16日にグレート・ウェスタン本線で予定通り運行を開始しました。しかし、初号列車では空調装置の故障により、車内に水漏れが発生し、41分遅れて到着するトラブルがありました。当該編成は修理のために車両基地に回送されました。

2021年4月から5月にかけて、台車周辺に亀裂が発見されました。4月には、ヨーダンパーに最大15mmの亀裂が見つかり、5月には車両本体のジャッキングポイント溶接部にも深刻な亀裂が見つかっています。

関連項目

385形電車（AT200）
395形電車（AT300）
801形電車（AT300）
802形バイモード車（AT300）
803形電車（AT300）
810形バイモード車（AT300）

外部リンク

英国IEP(都市間高速鉄道計画)向け高速車両Class 800/801の開発 (PDF) - 日立評論
Class 800series, Hitach（英語）, スコットランド has the Class 800 named a Pendolino!

出典

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