イタチハギ

イタチハギ（Amorpha fruticosa）

イタチハギは、北アメリカ原産の落葉低木で、マメ亜科イタチハギ属に分類されます。別名「クロバナエンジュ」とも呼ばれ、その名の通り、黒紫色の花を咲かせることが特徴です。日本では、道路法面や河原などで野生化している姿が見られます。

分布

原産地は北アメリカ（カナダの一部とアメリカ）、メキシコです。しかし、その生育の強さから、アメリカ西部、イタリア、日本など、世界各地に移入分布しています。

特徴

イタチハギは、高さ1 - 5メートルほどの低木です。樹皮は灰褐色で、皮目が目立ちます。若木の樹皮は緑色を帯びています。葉は互生し、奇数羽状複葉をしています。

花期は4 - 7月で、長さ6 - 20センチメートルの黒紫色の穂状花序をつけます。花は両性花で、果実は約1センチメートルの豆果です。豆果は裂開せず、表面にはいぼ状の突起があります。莢の中には種子が1個入っており、冬でも枯れた果序や豆果が残ることがあります。冬芽は鱗芽で互生し、卵形で、枝に伏せるように生えます。

イタチハギは、道端、河川敷、荒地、海岸など、幅広い環境に生育します。特に、高温や乾燥に強い性質を持っています。

根の土壌固定力が強く、マメ科植物特有の窒素固定能力を持つため、法面緑化に利用されています。

外来種問題

イタチハギは、1912年に韓国から日本に初めて導入され、1940年代以降、緑化や観賞用として本格的に輸入されました。しかし、その強い繁殖力から、現在では日本各地に野生化しています。

自然度の高い地域（霧ヶ峰や白山など）では、在来植物の生育を阻害したり、景観を損なうなどの問題が報告されています。

さらに、イタチハギの種子からは、同じく北アメリカ原産のイタチハギマメゾウムシが確認されており、イタチハギの導入が、新たな外来種の定着を促進している可能性も指摘されています。

これらの侵略性を考慮し、日本生態学会はイタチハギを「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定しました。しかし、緑化樹木としての経済的な有用性も考慮され、外来生物法では「別途総合的な取り組みを進める外来生物」とされ、要注意外来生物の指定に留まっています。そのため、特定外来生物のような導入や栽培への規制は行われていません。

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、191頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
村上興正、鷲谷いづみ 著「日本の侵略的外来種ワースト 100」、日本生態学会 編『外来種ハンドブック』（初版）地人書館、2002年9月30日、362–363頁。ISBN 4-8052-0706-X。

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