イチジク属

イチジク属（Ficus）について

イチジク属（Ficus）は、クワ科に属する植物の大きなグループで、約800種もの多様な種を含んでいます。この属は、熱帯から暖帯にかけて広く分布しており、その形態も高木から低木、さらにはつる植物まで多岐にわたります。

特徴

イチジク属の植物は、傷をつけるとゴム質の乳液を出すという共通の特徴を持っています。また、その特徴的な花序は、イチジク状と呼ばれる特有の形をしています。これは、花序の軸が肥大してつぼ状になり、その内側に小さな花が多数つくというものです。受粉には特定のハチが関与しており、この共生関係も興味深い点です。

多様な生育環境

熱帯地域を中心に生育する種が多く、日本では南西諸島に多く見られます。日本には12種が自生しており、そのうち5種が本州に分布しています。雌雄同株または雌雄異株で、高木になるものから低木、つる性のものまで、さまざまな形態が見られます。

気根の形成

アコウやガジュマルのように、木の枝から空中に根（気根）を出す種もあります。気根は地面に達すると幹のように発達し、複数の幹を持つように見えることもあります。特にベンガルボダイジュは、多数の気根が幹のように発達し、広大な範囲に広がることで知られています。

絞め殺し植物

イチジク属は、絞め殺し植物としても知られています。鳥やコウモリが種子を運び、他の樹木に着生して成長を開始します。その後、気根を伸ばして宿主を覆い、最終的には宿主を枯らしてしまうという、独特な生態を持っています。

イチジク状花序

イチジク属の最も特徴的な点は、その花序の構造にあります。一見すると果実のように見える部分は、実際には花序であり、その内部に多数の花が密集しています。この特殊な花序は隠頭花序、またはイチジク型花序と呼ばれています。受粉にはイチジクコバチという特定のハチが関与しており、このハチが花粉を媒介することで受粉が成立します。

幹生花（幹生果）

アコウやギランイヌビワのように、幹から直接花や果実をつける種もあります。これは幹生花（幹生果）と呼ばれ、熱帯の樹木によく見られる特徴です。

利用

イチジク属の植物は、様々な用途で利用されています。最もよく知られているのは、食用となるイチジクです。その他、カンテンイタビの果嚢は清涼飲料の原料として、また乾燥させたものは「愛玉子」として販売されています。また、インドゴムノキの樹液はかつて天然ゴムの原料として利用されていました。現在では、観葉植物としても広く利用されており、インドゴムノキ、ベンジャミン、ガジュマルなどが人気です。

分類

イチジク属は熱帯地域に広く分布しており、日本でも南西諸島を中心に多様な種が見られます。以下に、日本産と日本国外産の代表的な種を挙げます。

日本産

つる植物
オオイタビ（Ficus pumila）
イタビカズラ（Ficus sarmentosa var. nipponica）
ヒメイタビ（Ficus stipulata）
低木
イヌビワ（Ficus erecta）
ケイヌビワ（Ficus beecheyana）
高木
ホソバムクイヌビワ（Ficus ampelas）
コウトウイヌビワ（Ficus benguetensis）
オオバアコウ（Ficus caulocarpa）
ムクイヌビワ（Ficus irisana）
ガジュマル（Ficus microcarpa）
オオバイヌビワ（Ficus septica）
アコウ（Ficus superba var. japonica）
ギランイヌビワ（Ficus variegata var. garicae）
ハマイヌビワ（Ficus virgata）

日本国外産

フィカス・アルティシマ（Ficus altissima）
フィカス・アスペラ（Ficus aspera）
カンテンイタビ（Ficus awakeotsang）
ベンガルボダイジュ（Ficus benghalensis）
クリシャナボダイジュ（Ficus Krishnae）
フィカス・ベンジャミナ（Ficus benjamina）
イチジク（Ficus carica）
コバンボダイジュ（Ficus deltoidea）
インドゴムノキ（Ficus elastica）
カシワバゴムノキ（Ficus lyrata）
インドボダイジュ（Ficus religiosa）
コバノゴムビワ（Ficus rubiginosa）
フィカス・サギッタタ（Ficus sagittata）
エジプトイチジク（Ficus sycomorus）
フィカス・トリアングラリス（Ficus triangularis）
フィカス・ウンベラータ（Ficus umbellata）
フィカス・ビロサ（Ficus villosa）

栽培

イチジク属の植物は、一般的に耐陰性があり、観葉植物として育てやすいものが多くあります。明るい半日陰や日当たりの良い場所を好み、5月から10月にかけては戸外での管理も可能です。ただし、直射日光に当てるときは徐々に慣らす必要があります。室内で栽培する場合は、窓辺の明るい場所が適しています。

栽培のポイント

栽培適温は15〜30℃程度。
冬越しには8℃以上を保つのが望ましい。
生長期は5〜9月で、この時期に植え替えや水やり、施肥を行う。
湿度を好むため、高温乾燥期には葉水を与える。
冬は水やりを控えめにする。
挿し木や取り木で繁殖が可能。
* 病害虫には注意が必要。

この解説が、イチジク属への理解を深める一助となれば幸いです。

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