インドボダイジュ

インドボダイジュ：聖なる木の詳細

インドボダイジュ（学名: Ficus religiosa）は、クワ科イチジク属に分類される高木です。インド亜大陸を中心に、仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の信者にとって神聖な木として崇められています。仏教においては、釈迦がこの木の下で悟りを開いたと伝えられ、「仏教三霊樹」の一つとして特別な位置を占めています。また、リンネによって1753年に記載された植物の一つでもあります。

特徴

インドボダイジュは、熱帯地域では高さ30メートルにも達する高木に成長します。成長が早く、数千年の寿命を持つとも言われています。本来は落葉樹ですが、常に湿潤な環境下では常緑樹となることもあります。若木の樹皮は滑らかで横縞がありますが、成長すると縦に溝が入り、基部が広く張り出します。また、しばしば気根を出し、樹木の強度を高める役割を果たします。気根は動物の隠れ家としても利用されます。

葉は長さ15〜18cmで、円状卵形から三角状のハート形をしており、先端が細長く伸びるのが特徴です。葉の表面は光沢のある緑色で、裏面は光沢のない淡緑色です。成長した葉は革質になり、黄緑色の葉脈が目立ちます。新芽は朱色、銅色、ピンク色で、その美しい色合いは、草食動物から身を守るため、また特定の昆虫に見えにくくするためと考えられています。葉柄が長く柔軟なため、わずかな風でも大きくそよぎ、特有の葉擦れの音を発します。

他のイチジク属の植物と同様に、インドボダイジュも花嚢と呼ばれる袋状の器官の中に小さな花を咲かせます。この花嚢には、イチジクコバチが共生しており、花粉を運ぶ役割を担います。受粉後、花嚢は肥大化し、サクランボほどの大きさの果嚢となり、黄緑色から濃紫色、最終的には黒色に熟します。果嚢は食用にはあまり適していませんが、鳥やコウモリに食べられ、種子が散布されます。

絞め殺しの木となることもあり、他の樹木に巻き付いて成長することがあります。耐寒性は弱いため、日本では温室での栽培が一般的でしたが、地球温暖化の影響で関東以南の温暖な地域では露地栽培も可能になってきています。また、鉢植えの観葉植物としても人気があります。

分布

原産地はパキスタンからミャンマーにかけての地域で、インドから東南アジアにかけて広く分布しています。仏教の聖地であるインドを中心に、多くの国で栽培されています。日本では、寺院などでシナノキ科のボダイジュが代用として植えられていることが多いですが、仏教における「菩提樹」とは、本来インドボダイジュのことを指します。

諸言語における呼称

英語では、sacred fig, peepul, bo tree, pipal treeなどと呼ばれます。中国語では「菩提樹」と表記します。インドではサンスクリット語でaśvattha, pippalaなど、ベンガル語ではɔʃwɔtːʰɔ, pipːɔlなど、様々な名前で呼ばれています。スリランカでは、シンハラ語でbō, bō-gahaなどと呼ばれています。

仏教における重要性

インドボダイジュは、無憂樹、沙羅双樹と共に「仏教三大聖樹」の一つです。釈迦がこの木の下で悟りを開いたとされ、仏教徒にとって非常に重要な意味を持ちます。釈迦が悟りを開いた場所は、現在のインドのブッダガヤにあるとされています。釈迦が瞑想したとされる木は失われましたが、紀元前288年にスリランカに移植された木の枝が、その起源を辿るものとされています。

ヒンドゥー教における重要性

ヒンドゥー教においても、インドボダイジュは神聖な木として崇められています。ブラフマー、シヴァ、ヴィシュヌの三大神と深く関連付けられ、特に土曜日には、女性が木の周りに紐を結び、女神ラクシュミーから子供や富を授かると信じられています。また、インドボダイジュとインドセンダンが絡み合って成長することは吉兆とされ、特別な儀式が行われることもあります。

その他

インドボダイジュは、その神聖さから、多くの国で寺院や公園などに植えられています。また、観葉植物としても親しまれ、その美しい葉の形状は多くの人々を魅了しています。

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