イッツ・オンリー・ロックン・ロール

ローリング・ストーンズの転換期を告げる名盤『イッツ・オンリー・ロックンロール』

[1974年]]、ローリング・ストーンズはオリジナル・アルバム『イッツ・オンリー・[[ロックンロール]』を発表しました。このアルバムは、バンドにとって様々な意味で転換期を象徴する作品と言えるでしょう。

まずサウンド面においては、それまでのスワンプロック路線から一転、ソリッドでストレートなロックサウンドへと変化を遂げています。特に、『スティッキー・フィンガーズ』以降のストーンズサウンドに欠かせなかったホーンセクションは本作では完全に排除されています。

プロデュースは、ミック・ジャガーとキース・リチャーズによる匿名クレジットであるグリマー・ツインズが担当。これは彼らがストーンズの作品をプロデュースする初めての試みでした。長年ストーンズを支えてきたジミー・ミラーは、本作のレコーディング途中で降板しています。

本作は、もう一つ大きな出来事を背景に制作されました。それは、長年ストーンズのリードギタリストとして活躍してきたミック・テイラーの脱退です。1974年12月、本作リリース直後、テイラーは突如バンドを離れることを発表しました。脱退理由については様々な憶測が飛び交いましたが、テイラー本人はキース・リチャーズのドラッグ問題によるバンド内の不和を原因として挙げています。

レコーディングは、1973年のヨーロッパツアー終了直後の11月から、ドイツのミュンヘンにあるミュージックランド・スタジオで行われました。アルバムのタイトル曲である「イッツ・オンリー・ロックンロール」は、後にテイラーの後任としてストーンズに加入するロン・ウッドの自宅地下室で基本トラックが録音されたというエピソードも有名です。当時、ウッドは自身のソロアルバム制作中で、リチャーズとテイラーも参加しており、このことがウッドのストーンズ加入へと繋がっていったと言われています。

アルバムのパッケージは、シンプルで飾り気のないシングルスリーブ仕様。ジャケットのアートワークは、ガイ・ピーラートが担当。彼は以前、ストーンズを描いた画集『Rock Dreams』を発表しており、そのことがきっかけでジャガーに認められ、本作のレコーディングにも立ち会うことが許されたそうです。ジャケットの絵は、レコーディング中に生まれたイメージをもとに制作されました。

「イッツ・オンリー・ロックンロール」、「エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベッグ」、「ティル・ザ・ネクスト・グッドバイ」の3曲にはプロモーションビデオが制作され、現在ではストーンズの公式YouTubeチャンネルで視聴可能です。

商業的な成功という面では、イギリスで2位、アメリカで1位を獲得するものの、前作を上回る売上には至りませんでした。先行シングルとしてリリースされたタイトル曲「イッツ・オンリー・ロックンロール」はアメリカでトップ10入りを逃すなど、ストーンズは一時的な商業的な低迷期を迎えていました。

テイラーの脱退後、ストーンズは新ギタリスト探しに乗り出します。「グレイト・ギタリスト・ハント」と呼ばれたこのオーディションには、ジェフ・ベックやミック・ロンソンなど多くのギタリストの名前が挙がりましたが、最終的にロン・ウッドが加入することが決定しました。

1975年には、ロン・ウッドも参加した北米ツアー「NORTH AMERICAN TOUR 1975」を開催。このツアーでは、オープニングに「庶民のファンファーレ」が流れ、巨大なペニスをかたどった風船がステージに登場するなど、話題を呼んだ演出も行われました。しかし、この演出は警察から警告され、一度きりだったそうです。

収録曲には、テイラーのギターソロが聴きどころの「タイム・ウェイツ・フォー・ノー・ワン」、FBIの追跡を逃れる男を描いた「フィンガープリント・ファイル」など、バラエティに富んだ楽曲が収録されています。また、参加ミュージシャンには、ビリー・プレストン、ニッキー・ホプキンスといった豪華なゲスト陣も名を連ねています。

『イッツ・オンリー・ロックンロール』は、ローリング・ストーンズの音楽性とキャリアにおける転換点となった重要な作品であり、現在でも高い評価を得ています。様々なリマスター盤もリリースされており、そのサウンドを現代でも楽しむことができます。

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