イラク・ムスリム・ウラマー協会

イラク・ムスリム・ウラマー協会について

イラク・ムスリム・ウラマー協会（هيئة علماء المسلمين في العراق、英: Association of Muslim Scholars）は、イラクにおけるスンナ派の宗教指導者の連合体です。2003年のイラク戦争後において、スンナ派の宗教的権威として急速にその地位を確立しました。日本語では、イスラム聖職者協会やイスラム法学者協会などとも呼ばれ、さまざまな訳語が存在しますが、確固たる定訳はありません。

設立の背景

この協会は1953年に設立されましたが、バアス党体制の影響で活動が制限されていました。2003年4月にサッダーム・フセイン政権が崩壊すると、多くのウラマーが参加し、スンナ派の宗教指導機関としての基盤が再構築されました。特にシーア派の指導機関が強化される中、スンナ派ウラマーは危機感を募らせ、組織を活性化させる必要がありました。この過程でムスリム同胞団やイスラム神秘主義教団を傘下に持つまでに成長し、会員数は約3000人から6000人に達するとも言われています。

協会の役割と活動

ムスリム・ウラマー協会は、米国を中心とした有志連合によるイラクの占領に反対し、シャリーアの危機を訴えています。また、イラク統治評議会に参加しているスンナ派イスラーム主義政党であるイラク・イスラーム党を支持していますが、行き過ぎた暴力行為には明確に反対し、武装闘争を行うグループとは一線を画しています。

2004年春、ファルージャでの反米武装勢力の蜂起時には、イスラム党と協力し、地元勢力とアメリカ軍との停戦交渉を行うなど、調停者としての役割を果たしました。

さらに、ファルージャ周辺での外国人拘束事件が続発した際には、日本政府などの要請を受け、「占領と無関係の民間人は釈放すべき」との宗教令を発し、各武装勢力に呼びかけました。この呼びかけは一部人質の解放に影響を与え、特に日本人人質事件では3人の解放が行われました。

組織体制

ムスリム・ウラマー協会は政治組織とは異なり、イスラーム法に基づいた宗教的、政治的、社会的な責任を果たすことを目的としています。2004年のイラク情勢においては、スンナ派の占領下での抵抗運動の重要な要素となり、その存在感を示しました。

主要な幹部には、事務局長のハーリス・ダーリー、スポークスマンのムハンマド・バッシャール・ファイディー、そして日本人人質事件での交渉仲介者として知られるアブドゥッサラーム・クバイスィーなどがいます。彼らの見解や活動は、イラクの政治的状況に大きな影響を与えています。

結論

イラク・ムスリム・ウラマー協会は、複雑なイラクの政治情勢の中で重要な役割を果たしており、スンナ派の信徒に対して強い影響力を持っています。彼らの活動は、宗教的指導を超えて、社会的、政治的な問題にも広がっており、今後も注目すべき団体です。

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