イラン・イスラーム共和国憲法

イラン・イスラム共和国憲法

イラン・イスラム共和国憲法は、1979年のイラン・イスラム革命を経て制定された、イランの根幹を定める憲法です。この憲法は、革命後の新たな国家体制を確立し、イスラムの原則に基づいた政治、経済、社会の枠組みを規定しています。

成立の背景

1979年6月、革命直後の混乱の中で、バーザルガーン暫定内閣の下、フランス第五共和政憲法を参考に憲法草案が作成されました。その後、制憲議会での修正を経て、同年10月に国民投票で承認され、12月に施行されました。

1989年には、憲法改正が行われ、最高指導者の資格要件からマルジャエ・タクリード（模範となるべきシーア派法学者）であることが撤廃されました。この改正は、ホメイニー師の後継者としてハーメネイー師が最高指導者に就任することを可能にするためのものでした。また、公益判別会議の設置、首相職の廃止もこの時に行われました。

憲法の構成

イラン・イスラム共和国憲法は、前文と14章、177条から構成されています。

前文

憲法の基本的な方向性や精神が示されています。

第1章：一般原則

第1条で政体をイスラム共和制と定め、第2条で根本原則を規定しています。第3条では、植民地主義の拒絶、独裁政治の排除、政治的・社会的自由の保障、全世界の被抑圧者への支持など、国家の責務を定めています。第4条では、すべての法律がイスラム教の原理に基づくことが明記されています。

第2章：公用語、公用暦、国旗

第15条で公用語をペルシア語と定め、第16条でアラビア語教育を規定しています。第17条では公用暦をヒジュラ暦とし、第18条で国旗について規定しています。

第3章：人権

法の下の平等、両性の平等、女性の権利保護、思想・報道・結社・集会・職業選択の自由、社会保障、義務教育、逮捕の原則、居住移転の自由、裁判を受ける権利、罪刑法定主義、無罪推定の原則、拷問の禁止など、国民の基本的な権利と自由を保障しています。

第4章：経済及び財政問題

経済の基本方針として、高利貸しや独占事業の禁止、資源の浪費回避、外国による経済支配の排除、農業・工業生産の促進と自給自足の目標を掲げています。経済は公的部門・共同部門・私的部門の各部門に基礎を置くとし、所有権の尊重を定めています。

第5章：国民の主権

三権分立を規定しています。

第6章：立法

国会の定数、議員の義務、国境変更の禁止、外国人による会社設立や雇用の禁止、請願権、監督者評議会などについて規定しています。

第7章：評議会

地方評議会や各種評議会について規定しています。

第8章：最高指導者

最高指導者の資格要件や権限について規定しています。

第9章：大統領、内閣、軍隊、革命防衛隊

大統領の資格要件、就任宣誓、外国による軍事基地の設置禁止、軍隊の私的利用の禁止、イスラム革命防衛隊の規定、国民皆兵の規定などについて定めています。

第10章：対外政策

他国への侵略と支配の拒否、国内資源に対する外国の支配を招く条約の禁止、内政不干渉の原則に基づいた被抑圧人民への支援などを規定しています。

第11章：司法

最高司法評議会、法務省、最高裁判所、裁判公開の原則、訴訟における決定の根拠、判事の義務、軍事裁判所、行政司法裁判所、全国監察庁などについて規定しています。

第12章：ラジオ、テレビ

第13章：国家安全保障会議

第14章：憲法改正

特徴

イラン・イスラム共和国憲法は、イスラム法学者の統治（ヴェラーヤテ・ファギーフ）という独特の概念に基づいており、最高指導者が国家の最高権力者として位置づけられています。また、国民の権利と自由を保障する条項がある一方で、イスラムの教義に合致することが求められるなど、制約も存在します。

まとめ

イラン・イスラム共和国憲法は、革命後のイラン社会のあり方を定める重要な法典です。イスラムの原則と国民の権利のバランスをどのように実現していくのか、今後も注目される点です。

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