イラン・ラモーン

イラン・ラモーン：イスラエル初の宇宙飛行士

イラン・ラモーン（1954年6月20日 - 2003年2月1日）は、イスラエル空軍のパイロットであり、後にイスラエル初の宇宙飛行士となりました。彼は、スペースシャトルコロンビア号のSTS-107ミッションにペイロードスペシャリストとして参加しましたが、テキサス州上空でのコロンビア号空中分解事故により、他の6人の宇宙飛行士とともに殉職しました。彼は、アメリカ合衆国名誉宇宙飛行士勲章を授与された唯一の外国人でもあります。

生涯

ラモーンは、イスラエルのラマト・ガンで生まれ、ベエルシェバで育ちました。彼の母親と祖母は、アウシュビッツ強制収容所の生存者でした。「イラン」という名前は、ヘブライ語で「木」を意味します。

世俗的なユダヤ教徒とされていましたが、宇宙空間でもユダヤ教の慣習を守り、インタビューでは「自分は全てのユダヤ教徒、全てのイスラエル人を代表していると感じている」と語りました。宇宙飛行士として初めてカシュルート（ユダヤ教の食事規定）に沿った食品を要求した人物でもあります。彼は、宇宙空間での安息日の過ごし方について、ラビに相談したと伝えられています。

STS-107ミッション

STS-107ミッションにおいて、ラモーンはホロコーストの犠牲者であるペトル・ギンツが描いた絵『月の風景』を持参しました。また、イスラエルの大統領から託されたモーセ五書のマイクロフィルムも携行しました。さらに、ホロコースト生存者団体からの依頼で、ホロコーストの象徴である有刺鉄線のメズーザーを宇宙へ運びました。

奇跡の日記

ラモーンが宇宙で記していた37ページの日記は、奇跡的に焼け残りました。日記は未亡人の元へ届けられ、後にイスラエル博物館へ寄贈されました。法医学の専門家による修復作業が行われ、一部が公開されています。日記は、宇宙空間での極度の温度変化や微生物による影響を受けたにもかかわらず、その存在を保っていました。これは「奇跡」と評されています。

日記には、ミッション前半の6日間の記録が黒インクと鉛筆で記されています。紙は白いままで、事故の爆発でも炭化を免れました。

学歴と空軍での経歴

ラモーンは1972年に高等学校を卒業後、1987年にテルアビブ大学で電子工学とコンピュータ工学の学位を取得しました。

イスラエル空軍では大佐の階級にあり、戦闘機パイロットとして豊富な飛行経験を持ちます。1980年には、イスラエルが新たに購入したF-16戦闘機に搭乗する最初のパイロットの一人に選ばれました。1981年には、イラクの原子炉爆撃作戦に参加しています。彼はA-4、ミラージュIII、F-4、F-16などの機種で、数千時間もの飛行時間を記録しました。

NASAでの経歴

1997年、ラモーンはペイロードスペシャリストに選ばれ、スペースシャトルミッションのリーダーとして訓練を受けました。1998年から2003年まで、ジョンソン宇宙センターで訓練を受け、STS-107ミッションで15日22時間20分間宇宙に滞在しました。

家族と死

ラモーンの妻ローナと4人の子供たちは、事故当時テキサス州に滞在していました。長男のアサフ・ラモーンも空軍パイロットでしたが、2009年に訓練中の事故で亡くなりました。

栄誉と記念

ラモーンの功績を称え、NASA宇宙飛行メダル、NASA功労賞、合衆国名誉宇宙飛行士勲章などが授与されました。また、小惑星や火星の地形、各地の学校や公園などに彼の名前が冠されています。

イラン・ラモーンは、イスラエル初の宇宙飛行士として、またその生涯を通して、多くの人々にインスピレーションを与え続けています。

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