イラン海軍

イラン海軍の概要

イラン海軍（ペルシア語: نیروی دریایی ارتش جمهوری اسلامی ایران）は、イラン・イスラム共和国軍を構成する主要な軍隊の一つであり、ペルシャ湾における海上防衛を主たる任務としています。加えて、カスピ海におけるイラン領海の防衛もその重要な任務に含まれています。

組織と配置

イラン海軍は、約1万8000人の海兵と157隻の軍艦を擁しており、その規模は中東地域においても注目に値します。現在の海軍司令官はシャハラム・イラニ提督（准将）が務めています。海軍司令部は、内陸の首都テヘランに置かれているのが特徴です。艦隊は、ペルシャ湾沿いに展開する南方艦隊と、カスピ海沿岸に配置された北方艦隊に分かれています。主要な軍港としては、ペルシャ湾に面するバンダレ・アッバースと、カスピ海に面するバンダレ・アンザリーが挙げられます。

歴史

イラン海軍は、いくつかの事故や損失を経験しています。以下に主な事例を挙げます。

2018年1月: カスピ海を担当する北部艦隊に所属していたモッジ型フリゲート「ダマーヴァンド」が、嵐の影響で防波堤に衝突し、浸水・沈没しました。
2020年5月10日: 演習中に、モッジ型フリゲート「ジャマラン」が発射した艦対艦ミサイルが、誤ってヘンディジャン級支援艦「コナラク」に命中しました。この事故で19名が死亡、15名が負傷しました。「コナラク」は標的設置を担当していましたが、設置後の距離が不十分だったとされています。
2021年6月2日: 補給艦「カーグ」が航行中に火災に見舞われ、イラン南部のジャースク沖で沈没しました。この事故による死者は出ませんでしたが、33名が負傷しました。
2024年7月: モッジ型フリゲート「サハンド」が、バンダレ・アッバース港で修理中に転覆・沈没しました。

これらの事故は、イラン海軍が直面する運用上の課題と安全管理の重要性を示唆しています。

兵器

イラン海軍は、多様な艦艇と航空機を保有しています。

艦艇

潜水艦: 20隻（+2隻計画中）
キロ型潜水艦：3隻
ナハン級潜水艇
カディル級潜水艇（ヨノ型潜水艇のライセンス生産型）
フリゲート: 7隻（+2隻計画中）
サーム級フリゲート：3隻
モッジ型フリゲート：4隻（2隻計画中）
コルベット: 3隻
バヤンドゥー級フリゲート：2隻
ハムゼー：1隻
ミサイル艇: 23隻
哨戒艇: 62隻（高速艇を含む）
補給揚陸艦: 4隻
戦車揚陸艦: 2隻（-3隻計画中）
揚陸艇: 6隻
ホバークラフト: 6隻
給水艦: 4隻
母艇: 12隻
補給艦: 1隻
給油艦: 2隻
支援艦: 7隻

航空機

艦載ヘリコプター: 18機
陸上固定翼機: 30機
陸上ヘリコプター: 40機

さらに、UCAV（無人ドローン）も多数保有しています。これらの兵器は、イラン海軍が多様な海域での作戦遂行を可能にするための重要な要素です。

まとめ

イラン海軍は、ペルシャ湾とカスピ海という戦略的に重要な海域を守るための重要な戦力です。近年発生した事故は、運用上の課題を示唆していますが、その装備と人員の規模から、地域における重要な存在であることに変わりはありません。イラン海軍の動向は、中東地域の安定に大きな影響を与えるため、国際社会からも注視されています。

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