イリジウムコミュニケーションズ

イリジウム・コミュニケーションズとは

イリジウム・コミュニケーションズ（Iridium Communications Inc.）は、衛星電話や衛星インターネット接続サービスを提供するアメリカの企業です。このサービスは、モトローラ社のCEOであったロバート・ガルビンが1998年に開始した「イリジウム」という名称の衛星通信サービスに由来します。当初のイリジウムは1999年に経営破綻しましたが、その後、同社の設備を継承するイリジウム・サテライト（Iridium Satellite LLC）が設立され、2009年の合併を経て現在のイリジウム・コミュニケーションズとなりました。

イリジウムの概要

イリジウムの衛星通信サービスは、高度780kmに66個の衛星を運用しています。当初は77機の衛星によるコンステレーションが計画されていたため、原子番号77のイリジウムにちなんで名付けられました。事業は、モトローラが約18%、日本イリジウムが約11%間接出資する「IRIDIUM LLC」社が担い、1997年12月からイリジウム通信衛星が打ち上げられ、1998年11月にサービスを開始しました。

しかし、多額のインフラ投資負担や高価な端末（日本では40万円前後）が原因で契約数は伸び悩み、サービス開始から1年足らずの1999年8月に倒産しました。2000年3月にはサービスを停止しましたが、2000年11月にイリジウム・サテライト社が全ての資産を買い取ることで合意。その後、ボーイング社への衛星維持費の軽減や、地球局の一本化、人員削減などの改革を行い、主に米国政府や国防総省などを対象とした通信サービスに事業モデルを転換して再出発しました。

主な端末

イリジウムの主な端末には、以下のようなものがあります。

音声通信と2400bpsのデータ通信・ショートメッセージングサービスが可能な携帯端末
IMO条約の船舶警報通報装置（SSAS）に対応した端末
船舶用イリジウム衛星電話「OpenPort」：最大128kbpsの高速データ通信が可能で、複数回線の同時収容に対応。パケット制の導入により、通信時間ではなくデータ量に応じた課金が可能。

初代イリジウムでは、携帯電話（セルラー）網とのデュアルネットワークに対応する機種が主流で、モトローラと京セラが端末を販売していました。

イリジウム衛星

イリジウム衛星は、鏡面のようなアンテナを持ち、太陽光を反射して地上の狭い領域を強く照らすことがあります。この現象は「イリジウムフレア」と呼ばれ、明るい物体が移動するように見えるため、UFOと誤認されることもありました。しかし、衛星の世代交代により、イリジウムフレアは見られなくなりました。

2007年、イリジウム・コミュニケーションズは、既存の66機の通信衛星をすべて更新する総額30億ドルの次世代衛星通信ネットワーク計画「Iridium NEXT」を発表しました。この計画では、2014年3月にオービタルサイエンシズ社が製造を開始し、軌道上で運用する66機と予備機を含めた計81機を3年間で製造する予定でした。打ち上げは2015年2月に開始され、2017年までに全ての衛星が軌道に投入される予定でしたが、遅延が生じています。打ち上げは現在、スペースXのファルコン9によって継続的に行われています。

衝突事故

2009年2月10日、北シベリア上空で、運用中のイリジウム33号が、機能停止中のロシアの軍事通信衛星コスモス2251号と衝突しました。この事故は、宇宙空間で発生した初めての人工衛星同士の衝突事故であり、500個以上のスペースデブリを発生させました。イリジウム社は、事故発生後30日以内にスペア衛星を再配置する計画を発表し、ユーザーへの影響は軽微と発表しました。

各国での展開

日本

日本では、第二電電（DDI, 現：KDDI）と京セラらが出資して設立された「日本イリジウム」によって、1998年11月からアメリカと同時にサービスが開始されました。DDIにとっては、DDIセルラーグループ、ツーカー、DDIポケットに次ぐ移動体通信事業への参入でした。

これに伴い、長野県の山間部に3カ所のアースターミナルが設置されましたが、2000年3月末に米国イリジウム社のサービス停止に伴い、日本でも端末が使用できなくなり、アースターミナルも運用を停止しました。2001年にイリジウム・サテライト社によってサービスが再開されたものの、日本イリジウムは法人清算処理に入っており、海外免許で取得した端末の不正使用が問題になりました。

この状況を打開するため、2005年6月にKDDIの法人事業子会社によってサービスが再開されました。2015年以降は、イリジウム・コミュニケーションズ社が、KDDI以外の企業ともVAR契約を結ぶようになり、現在では複数の国内企業がイリジウム通信サービスを提供しています。

関連項目

衛星電話
モルニヤ
テレデシック
* グローバルスター

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