インディアン準州

インディアン準州とは

インディアン準州は、アメリカ合衆国がインディアン民族を定住させる目的で割り当てた土地を指す、アメリカ史における用語です。インディアン・カントリー、インディアン・テリトリー、インディアン特別保護区とも呼ばれます。

現在のBIA（内務省インディアン局）管理下の保留地（Reservation）とは異なり、歴史的にインディアンが強制的に移住させられた西部の土地を指す場合が多く、その成立と変遷には、アメリカの複雑な歴史が反映されています。

準州という言葉について

「準州」という訳語は、英語のTerritoryに当てられたものですが、実際には、アメリカ合衆国東部の入植地を意味する「編入された地域（organized territory）」とは異なり、これらのインディアンの土地は、当初は未編入の地域でした。そのため、「準州」よりも「領地」と訳す方が適切であると考えられます。

インディアン準州の境界

インディアン準州の一般的な境界は、1834年のインディアン・インターコース法によって定められました。この法律は、インディアンとアメリカ合衆国との間の交易や交流に関する規制を定めたもので、準州の範囲を明確にする上でも重要な役割を果たしました。

インディアン準州の歴史

起源

インディアン準州の起源は、1763年のイギリスによる宣言に遡ります。この宣言は、白人の入植地をアパラチア山脈の東側に制限し、インディアンの土地を保護しようとするものでした。

しかし、アメリカ独立戦争後、インディアン準州はミシシッピ川以西の土地に限定されるようになり、その範囲は縮小していきました。

アメリカの拡大とインディアンの排除

アメリカ独立戦争において、多くのインディアン部族はイギリスと長年の関係があり、アメリカの反乱者とは関係が薄かったため、イギリス側に協力しました。しかし、アメリカが勝利した結果、インディアンは不利な立場に立たされます。

アメリカは二度にわたりオハイオ・カントリーに侵入しましたが、いずれも敗北します。しかし、1794年のフォールン・ティンバーズの戦いで、インディアン連合を打ち破ると、グリーンヴィル条約を締結し、現在のオハイオ州のほとんどと、インディアナ州の一部、さらにはシカゴやデトロイトを含む地域をアメリカ合衆国に割譲させ、インディアンを西部へと追いやりました。

インディアン移住法と涙の道

19世紀初め、アメリカ大統領は断続的にインディアン準州の構想を打ち出しました。そして、1830年のインディアン移住法の可決後、アンドリュー・ジャクソン大統領は、インディアンを西部に強制的に移住させる民族浄化政策を積極的に推進しました。

南東部の「文明化五部族」（チェロキー族、チョクトー族、チカソー族、クリーク族、セミノール族）は、この政策によって最も大きな被害を受けました。彼らは、過酷な道のりを「涙の道」として知られる移住を強いられ、多くの命が失われました。

彼らがたどり着いた場所は、現在のアーカンソー州とオクラホマ州であり、そこにはすでに白人や逃亡奴隷、強制移住させられた他の部族（デラウェア族、シャイアン族、アパッチ族など）が暮らしていました。

文明化五部族の活躍と土地の開放

文明化五部族は、移住先でタルサ、アードモア、ターレクア、マスコギなどの町を建設し、これらは後に州の大都市へと発展しました。また、彼らは黒人奴隷を連れてきて、州の黒人人口を増加させました。

西部のフロンティアが消滅すると、インディアン準州は「白人にとって手つかずの最後の土地」として注目されるようになりました。白人投資家や農民による入植圧力が高まり、インディアン戦争の終結後には、これに抵抗する力は諸部族には残されていませんでした。

「スーナー」と呼ばれる抜け駆け入植者が後を絶たず、1889年から1890年代にかけて、各部族の多くが連邦条約を打ち切られ、彼らの土地は入植者に「開放」され、大規模なランドラッシュが起こりました。

インディアン準州の消滅

インディアン準州は、徐々に現在のオクラホマ州まで縮小していき、1890年にオクラホマ[[準州]]が成立すると、その領域は東半分にまで減少しました。

1905年、インディアン準州の住民はセコイヤ州としてアメリカ合衆国に加入しようとしましたが、議会と政権に拒否されました。その後、単一の州として加入を目指し、1907年11月にオクラホマ州が州制となったことで、インディアン準州は消滅しました。

現在のインディアン保留地

現在でも多くのインディアンが、特にオクラホマ州東部に保留地（Reservation）を領有しており、連邦規定によって独自の部族政府を持っています。

インディアン準州の歴史は、アメリカの拡大とインディアンの排除の歴史であり、現在もなお、その影響は残っています。この歴史を理解することは、アメリカ社会を深く理解する上で重要な要素となります。

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