インドネシアの首都

インドネシアの首都：歴史と変遷、そしてヌサンタラへの移転

インドネシアの首都は、その歴史の中で幾度かの変遷を経てきました。植民地時代から独立、そして現代に至るまで、首都の役割は常に変化し、国家の歴史と密接に結びついています。この文章では、インドネシアの首都の歴史と、現在進められている首都移転計画について詳しく解説します。

植民地時代と独立初期の首都

17世紀初頭、オランダはジャワ島に拠点を築き、現在のジャカルタである「ジャヤカルタ」を「バタヴィア」と改名しました。バタヴィアはオランダ領東インドの首都として発展し、運河が張り巡らされたヨーロッパ風の都市となりました。しかし、衛生環境の悪さからマラリアなどの感染症が蔓延し、住民の健康状態は非常に悪い状態でした。

19世紀になると、バタヴィアは旧市街地（コタトゥア）と新市街地（ヴェルテヴレッデン）の2つの中心を持つ都市に発展しました。コタトゥアは商業の中心として栄え、ヴェルテヴレッデンは行政の中心として機能しました。

20世紀初頭、オランダ領東インド政府は首都をバタヴィアからバンドンに移転する計画を立てました。バンドンは行政の中心地として整備され、電気通信や鉄道、郵便制度などの重要な施設が置かれましたが、世界恐慌と第二次世界大戦の勃発により、首都移転は実現しませんでした。

1942年、日本軍がバタヴィアを占領し、都市名をジャカルタと改めました。その後、インドネシアは独立を宣言し、ジャカルタが首都となりましたが、オランダとの独立戦争中は、ジョグジャカルタやブキティンギに首都機能が一時的に移されました。

独立後の首都ジャカルタ

独立後、スカルノ大統領のもとでジャカルタは新たな共和国の首都として発展しました。モナス（国家記念碑）やイスティクラルなどのモニュメントや巨大建造物が建設され、ジャカルタは国家の象徴としての役割を担うようになりました。

1966年、ジャカルタは「ジャカルタ首都特別州」となり、中央官庁や外国の大使館などが建設され、近代的な都市へと成長を遂げました。スハルト大統領時代には、中央集権的な政策のもと、ジャカルタは政治・経済の中心としての地位を確立しました。都市化の急速な進展に伴い、人口が急増し、周辺地域に市街地が拡大し、ジャボデタベックという巨大都市圏を形成しました。

首都移転の議論と計画

ジャカルタの人口過密や環境問題の深刻化により、首都移転の議論は長年にわたり行われてきました。交通渋滞、インフラ不足、地盤沈下、洪水などの問題が深刻化し、ジャカルタは首都としての機能を維持することが困難になりつつありました。特に、地下水の過剰な汲み上げによる地盤沈下が深刻で、2050年までにジャカルタの大部分が海に沈むという予測もあります。

このような状況から、首都移転の具体的な検討が始まりました。首都移転方式として、新都市を建設する方式と、行政機能のみを移転する方式の2つが検討されました。新都市を建設する方式では、パランカラヤやバンジャルマシンなどの候補地が挙げられ、行政機能のみを移転する方式では、ジョンゴルやカラワンなどが候補地として検討されました。

ヌサンタラへの移転

ジョコ・ウィドド大統領は、2019年にボルネオ島のカリマンタンへの首都移転計画を発表しました。新首都の候補地は、東カリマンタン州のクタイ・カルタネガラ県と北プナジャム・パスール県にまたがる地域に決定し、新首都の名称を「ヌサンタラ」と発表しました。移転費用の大部分は民間投資で賄い、2024年8月17日には独立記念式典をジャカルタとヌサンタラの両方で行い、首都移転を本格化させました。2024年11月には、ジャカルタの首都としての地位を正式に削除する法案が国会で可決されました。

ヌサンタラは、インドネシアの新たな首都として、持続可能な都市開発を目指し、環境に配慮した都市計画が進められています。新首都の建設は、インドネシアの未来を担う重要なプロジェクトとして、国内外から注目されています。

結論

インドネシアの首都は、歴史の流れの中で、ジャカルタからヌサンタラへと移り変わろうとしています。首都の変遷は、インドネシアの政治、経済、社会の変化を反映しており、今後のヌサンタラの発展は、インドネシアの未来を大きく左右するでしょう。ジャカルタが抱えていた問題点を克服し、持続可能な都市としてヌサンタラが発展していくことを期待しましょう。

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