インド高速鉄道計画

インド高速鉄道計画：概要と現状

インド高速鉄道計画は、インド鉄道省とインド鉄道が主導する、国内の主要都市間を結ぶ高速鉄道網を構築する壮大なプロジェクトです。2014年の総選挙で、インド人民党とインド国民会議の両党が公約に掲げたことで、その実現に向けた動きが本格化しました。

特に、ナレーンドラ・モーディー首相率いるインド人民党は、チェンナイ、デリー、コルカタ、ムンバイという四大都市を結ぶ「ダイヤの四角形」構想を打ち出しました。当初、インド鉄道は既存路線の改良により最高速度160km/hを目指していましたが、安全性への懸念から高速鉄道建設の必要性が高まりました。

最初の区間：ムンバイ - アフマダーバード

最初の区間として選ばれたのは、ムンバイとアフマダーバードを結ぶ約500kmの路線です。2017年に着工し、2027年の開業を予定していましたが、用地買収の遅れにより、計画は大幅に遅延しています。

この区間の建設費は9800億ルピー（約147億米ドル）と見込まれ、日本から最大1兆4600億円の円借款で資金調達されることになりました。この背景には、日本の新幹線技術の導入があり、全線高架で建設される予定です。

歴史：構想から実現へ

高速鉄道の導入構想は、1980年代に当時の鉄道大臣マーダヴ・ラーオ・シンディアによって提唱されました。しかし、建設費の高騰と運賃設定の課題から、当時は実現しませんでした。

1987年のフィジビリティスタディでは、250km/h～300km/hの専用線建設費用が1kmあたり4900万ルピーと試算されました。また、ムンバイ - アフマダーバード間が最も実現性が高いと判断されました。

2009年には、インド鉄道省が「ビジョン2020」を発表し、以下の6つの回廊で高速鉄道の導入を提唱しました。

1. デリー - チャンディーガル - アムリトサル
2. プネー - ムンバイ - アフマダーバード
3. ハイダラーバード - カジペット - ドルナカル - ヴィジャヤワーダ - チェンナイ
4. ハウラー - ハルディア
5. チェンナイ - バンガロール - コーヤンブットゥール - エルナクラム
6. デリー - アーグラ - ラクナウ - ワーラーナシー - パトナ

2013年には、インド高速鉄道会社(HSRC)が設立され、官民連携のBOT方式で建設が進められることになりました。2015年の日印首脳会談では、ムンバイ - アフマダーバード間で日本の新幹線方式を採用することが合意され、日本が資金面と技術面で援助することになりました。

2017年には起工式が行われましたが、2020年には用地買収の遅れから延期協議が行われました。2022年になってマハーラーシュトラ州が許可を出すなど、進展は見られたものの、開業時期は依然として不透明です。一部報道では2027年から2030年になるとも言われています。

路線と車両

ムンバイ - アフマダーバード間の路線では、JR東日本のE5系新幹線と同型の車両が25編成導入される予定です。最高速度は320km/hで、ビジネスクラス55名、スタンダードクラス698名が乗車可能です。

実現可能性調査

複数の企業や団体が、各路線の実現可能性調査を実施しています。

プネー - アフマダーバード間：仏Systra、伊Italferr、インド鉄道技術経済サービス（RITES）
デリー - パトナ間：英Mott MacDonald
ハウラー - ハルディア間：西INECO、西Prointec、西Ayesa
ハイダラーバード - [チェンナイ]]間：[[日本貿易振興機構]、Oriental Consultancy、米Parsons Brinckerhoff

2013年には、アフマダーバード - ムンバイ間の調査を18ヶ月以内に完了させることで日印両政府が合意しました。

まとめ

インド高速鉄道計画は、インドの交通インフラを大きく変える可能性を秘めたプロジェクトです。しかし、用地買収の遅れ、技術的な課題、資金調達など、解決すべき問題も多く、今後の動向が注目されます。

脚注

詳細な情報については、以下の外部リンクをご参照ください。

外部リンク

Official website of High Speed Rail Corporation India Limited （仮リンク）

インド高速鉄道計画