イースタン航空66便着陸失敗事故

イースタン航空66便着陸失敗事故

1975年6月24日、イースタン航空66便は、ルイジアナ州ニューオーリンズからニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港へ向かう途中、悲劇に見舞われました。着陸進入中に、航空機は強力なウインドシア（風の急激な変化）に遭遇し、墜落しました。この事故は、航空史における重要な転換点となり、気象現象が航空機の安全に及ぼす影響について、深く認識させる出来事となりました。

事故の経緯

イースタン航空66便は、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港の22L滑走路への着陸を試みていました。その直前には、他の航空機も雷雨の中を通過し、ダウンバースト（下降気流）に遭遇していました。しかし、地上の管制塔では航空機を危険にさらすほどの強い風は観測されていなかったため、滑走路は閉鎖されませんでした。

着陸進入中の66便は、強力なウインドシアに遭遇しました。機体はまず強風で持ち上げられ、その後、積乱雲の中心から吹き降ろす下降気流に捉えられました。この結果、機体は速度を失い、急激に降下を始め、滑走路の手前約730メートルの地点にあった誘導灯に激突しました。機体は大きく旋回しながら大破し、炎上しました。この事故で、乗員乗客124名のうち、12名が救助されましたが、そのうち3名は後に死亡しました。

最終的に生き残ったのは、客室乗務員2名と乗客7名で、いずれも機体の後方に座っていました。国家運輸安全委員会（NTSB）は、事故後7日目以降に死亡した搭乗者は、事故による死者数には含めていません。

事故原因の究明

当初、事故の原因は操縦ミスではないかという説も浮上しましたが、気象学者の藤田哲也氏が、ダウンバーストが事故の直接的な原因であることを突き止めました。66便は高度500メートルを飛行中にダウンバースト（マイクロバースト）に遭遇し、急激な高度低下に見舞われました。事故当時、乗員は計器ではなく外の対象物を視認しようとしていましたが、激しい雨のために視界が非常に悪く、地表付近の下降気流によって機体が押し下げられていることに気づきませんでした。墜落寸前で着陸復行を試みましたが、時すでに遅く、地表への激突を避けることはできませんでした。

NTSBは、ウインドシアの規模から判断して、着陸復行は困難だったとの見解を示しました。そして、事故の最大の要因は、ウインドシアが発生している気象条件の下で着陸を試みたことにあると結論づけました。藤田氏がドップラーレーダーを使用することで、ウインドシアの発生をある程度予測できると証明したことで、世界各地の空港にドップラーレーダーが配備されるきっかけとなりました。

事故がもたらした教訓

イースタン航空66便の事故は、航空業界に大きな影響を与えました。この事故を契機に、パイロットはウインドシアに関する訓練を受け、空港では気象観測システムの改善が進められました。また、この事故は、気象現象が航空機の安全に及ぼす影響について、再認識させる重要な教訓となりました。航空事故の防止には、技術的な進歩だけでなく、気象情報の正確な把握と活用が不可欠であることを、この事故は教えています。

参考文献

デビッド・ゲロー『航空事故（増改訂版）』 イカロス出版 1997年5月 ISBN 4-87149-099-8

関連項目

航空事故
航空事故の一覧 (1980年から1999年)
ダウンバースト
パンアメリカン航空759便墜落事故
デルタ航空191便墜落事故

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