イースタン航空980便墜落事故

1985年1月1日、イースタン航空980便は、パラグアイのアスンシオンからボリビアのラ・パスへ向かう途中、イリマニ山に激突し、乗客19名と乗員10名、計29名全員が犠牲となる悲劇的な事故が発生しました。

事故発生の経緯

イースタン航空980便（機体：ボーイング727-225、機体番号：N819EA）は、アスンシオンのシルビオ・ペッティロッシ国際空港を17時57分に離陸しました。搭乗者の中には、アメリカの在パラグアイ大使夫人や、パラグアイのアメリカ平和部隊ディレクターも含まれていました。ラ・パスのエル・アルト国際空港への着陸予定時刻は19時47分と伝えられていましたが、19時37分に「高度25,000フィート、ラ・パスの南東55マイル」という最後の報告を最後に消息を絶ちました。事故発生から5時間以上経過した1月2日未明に、イースタン航空の幹部がこの事実を公表しました。

捜索活動の困難

980便の消息が途絶えてから約20時間後、ボリビア空軍の捜索により、イリマニ山の氷河地帯に広範囲に散乱した残骸が発見されました。墜落地点は、標高5,970メートル（約19,600フィート）地点で、エル・アルト国際空港のVOR/DME保安施設から約40キロメートル離れた場所でした。事故発生後、アメリカ外交官やボリビア人登山家による救助隊が編成されましたが、悪天候のため現場への接近は困難を極めました。ボリビア空軍も、ヘリコプターでの現場付近への着陸は不可能と判断しました。1月5日になって、ボリビア人救助隊が強風と雪の中、墜落現場に到達しましたが、生存者の発見には至りませんでした。また、フライトデータレコーダー（FDR）とコックピットボイスレコーダー（CVR）を含むブラックボックスの回収もできませんでした。

その後、1985年10月には、アメリカ連邦航空局（FAA）が調査チームを派遣しましたが、悪天候と高山病によるメンバーの体調不良により、十分な調査を行うことができませんでした。2006年には、イリマニ山に登頂した登山隊が事故機の残骸と思われるものを発見しました。登山ガイドによると、イリマニ山の氷河融解が進んでおり、今後、遺体やレコーダー類が発見される可能性があると指摘しています。

ブラックボックスの一部発見と分析

事故から31年後の2016年6月4日、事故現場付近を訪れた男性2名が、ブラックボックスの一部と思われる破片とテープを発見しました。2017年2月7日、アメリカ国家運輸安全委員会（NTSB）は、これらの分析結果を公表しました。発見された破片は、ブラックボックスの構成部品と一致するものの、シリアルナンバーは確認できませんでした。また、テープは、CVRまたはFDRに使用される1/4インチのテープではなく、3/4インチのU-Maticビデオテープであり、スペイン語吹き替え版のテレビシリーズ「I Spy」のエピソード「Trial by Treehouse」の18分間の録画であることが判明しました。この発見は、ブラックボックスの完全な回収と事故原因の特定には至らなかったものの、長年の謎に包まれた事故の一端を明らかにするものでした。

事故原因の推定

事故機は、ラ・パスの南西55マイル、高度25,000フィートを飛行中、航空管制に連絡し、高度18,000フィートへの降下と空域進入許可を得ていました。本来、針路134度でラ・パスに進入する予定でしたが、実際には針路106度の方向からイリマニ山に衝突していました。事故当時の天候は夜間であり、悪天候による視界不良のため計器飛行が必要な状況でした。操縦士は、悪天候を避けるために巡航速度を維持したまま、わずかに高度を下げていたと考えられています。この状況下で、進路上の地形を十分に確認することができず、適切な回避行動がとれなかったことが事故の主な原因と推測されています。

イースタン航空980便墜落事故は、悪天候とパイロットの判断ミスが複合的に重なり、多くの尊い命が失われた悲劇として、航空史に深く刻まれています。

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