ジェームズ・ゴードン・ロウ・シニア

ジェームズ・ゴードン・ロウ・シニア（1857年-1929年）は、アメリカ競馬史にその名を刻む偉大な騎手にして調教師です。バージニア州リッチモンド出身の彼は、10歳の時にホテルの新聞販売所で働いていたところをデビッド・マクダニエル大佐に見出され、騎手としてのキャリアをスタートさせました。

14歳にして騎手としてデビューしたロウは、3歳馬ハリーバセットとのコンビで無傷の9連勝という驚異的な記録を達成。ジェロームハンデキャップ、ケナーステークス、ディキシーハンデキャップ、トラヴァーズステークスなど、数々の重賞競走を制覇しました。さらに、サラトガカップでは名馬ロングフェローを破る快挙も成し遂げています。ジョーダニエルやスプリングボクにも騎乗し、ベルモントステークスを複数回制覇。1871年から1873年にかけては、全米リーディングジョッキーの称号を獲得するなど、若くしてその才能をいかんなく発揮しました。

しかし、体重増加により騎手としての継続が困難になったロウは、1878年に騎手を引退。翌年から調教師に転身し、ドワイヤーブラザーズステーブルに所属しました。ここでロウは、ケンタッキーダービーを含む18連勝という驚異的な記録を残した名馬ヒンドゥーなど、数々の名馬を育成します。ルークブラックバーン（1880年に24戦22勝）、ミスウッドフォード（3歳から5歳にかけて16連勝）などもロウの手腕によって活躍しました。

その後、オーガスト・ベルモント1世のもとでも手腕を発揮しますが、ベルモント1世の死去により厩舎は解散。しばらくは各地の競馬場で発走委員を務めました。1899年にはジェームズ・ロバート・キーンに雇われ、低迷していたキーンの競馬資産立て直しに貢献します。コマンド、ピーターパン、サイゾンビーといった活躍馬を送り出しましたが、中でも15戦無敗という驚異的な戦績を残したコリンは、ロウにとって最高の傑作でした。ロウはコリンを非常に高く評価しており、自身の墓碑銘に「彼はコリンを調教した」とだけ刻むよう遺言を残したほどです。

1908年にニューヨーク州で馬券発売が禁止されると、多くの関係者が国外へ移籍しましたが、ロウはアメリカに留まりました。1913年にキーンが死去すると、ハリー・ペイン・ホイットニーに雇われ、1915年にケンタッキーダービーを牝馬として初めて制覇したリグレットなどを育成。そして1929年8月2日、サラトガでその生涯を終えました。

ロウはアメリカクラシック三冠競走で11勝、特にベルモントステークスでは1883年から1913年にかけて8勝を挙げました。彼の偉大な功績は後世に語り継がれ、1955年にアメリカ競馬名誉の殿堂博物館が設立されると、初年度の殿堂入りメンバーに選出されました。彼の名は、アメリカ競馬史に永遠に刻まれることでしょう。ロウが手がけた主な名馬には、ルークブラックバーン、ヒンドゥー、ミスウッドフォード、コマンド、サイゾンビー、バロット、ピーターパン、コリン、マスケット、ウィスクブルーム、リグレットなどが挙げられます。これらの馬たちも、アメリカ競馬史に名を刻む名馬として知られています。

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